高い還元率をうたい返礼品競争が過熱した「ふるさと納税バブル」がはじけて2年あまりが経ちます。
総務省が「返礼品は地場産品に限る」などのルールを厳格に定めたことで、多くの自治体が特産品を売り出す好機とみて知恵を絞り始めました。
新制度にうまく適応し、再興につなげた自治代はどこだったのでしょうか。
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ふるさと納税とは
ふるさと納税は、故郷や応援したい自治体を選んで寄付すると、2000円を超える部分について居住地の所得税や住民税から控除が受けられる制度です。
過疎などにより税収が減少している地域と、都市部との地域間格差を是正することを目的として2008年に始まりました。
返礼割合は寄付額の3割以下
高所得者ほど控除額が大きくなるため、富裕層が多い都市部ほど居住地以外に寄付する住民が多くなります。
寄付を集めるための返礼品競争が過熱したことに対し、総務省は19年6月「返礼割合は寄付額の3割以下」にすることなどルールを厳格化しました。
参加できる自治体を指定する制度を導入したのです。
全国1788自治体中1786が参加している
住民税が減少している自治体には、減少額の75%が地方交付税から補填されますが、交付税を受け取っていない東京都23区などは「流出」する一方の状況が続きます。
制度に反対する東京都と返礼品の基準違反で指定を取り消された高知県奈半利町を除く全国1788自治体中1786が参加しています。
ふるさと納税による寄付額は全国合計で6724億円
総務省が7月末に発表した2020年度のふるさと納税による寄付額は全国合計で6724億円と過去最高を記録しました。
19年度は制度変更に伴って545市区町村が減収となり、全国も4875億円と前年度から4・9%減っていました。
一方で全国の市区町村をみると、この間も寄付額を伸ばし続けた自治体は少なくありません。
2年度連続で増収となったのは905市区町村。うち前年度比増加率で首位に立ったのは岐阜県土岐市でした。
同市は08年度にふるさと納税を導入したものの「自治体間の過度な競争は制度の趣旨にあっていない」として返礼品提示を見送ってきました。
19年6月に総務省が「返礼割合3割以下」「地域内で生産された物品」などのルールの厳格運用を始めたことを受け、専門家による返礼品選定委員会を発足。20年10月以降、美濃焼を中心に事業を開始しました。
デザイン性に富んだ美濃焼を前面に打ち出した効果は大きく、新たなファン層の獲得につながっています。
集めた寄付は子供たちが読書に触れる機会を増やすための環境整備などに活用しています。
自治体同士が協力する「共通返礼品」
もちろん返礼品を「地場産品」に限る以上、全国の自治体からは「海産物や和牛など『持てる者』だけがますます有利になった」との指摘も根強いです。
ただ、ふるさと納税で定義される地場産品は、村内産や町内産だけに限りません。
和歌山県では自治体同士が協力し「共通返礼品」を設定できる制度を積極的に活用しています。
「手を取り合うほうが全体の底上げにつながる」と、九度山町が話を持ちかけ、19年7月に13市町で開始ししました。
13市町の20年度受け入れ額は平均で6割増加。増加率2位の同県由良町も、この枠組みに参加し増収へとつなげました。
同町は今後「ゆら早生みかん」などの地元産品の発信にも力を入れ、PRしていくとしています。
参加自治体は増え続けており、県内30市町村のうち24が「共通返礼品」を採用。柿やみかんなど210品目超が集まります。
災害に遭った自治体へのふるさと納税も多い
「返礼品」の受領だけを目的とせず「地域を応援したい」という、本来の理念に沿った動きも広がりつつあります。
顕著に表れるのが、災害発生時です。
都道府県別の前年度比伸び率トップは、2・4倍となった熊本県(市区町村分含む)です。
寄付先の内訳をみると、上位には20年7月の豪雨で被災した市町村が並びました。
被害が集中した人吉市(全国14位)には直後から「支援に充ててほしい」と全国から寄付が集中。7月だけで前年度の年間受け入れ額に相当する3億円弱が集まりました。
住民が長期避難を強いられた津奈木町(17位)でも、受け入れ額が前年度比10倍となりました。
支援は直接の寄付にとどまりません。
受け入れが増えるほど被災自治体にとって負担となる「受領証明書」の発行手続きなどを肩代わりする自治体も増えてきました。
人吉市の場合、山形県南陽市など全国10市が支援。7月の静岡県熱海市の土石流災害でも4市町が代理寄付を引き受けました。
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