住宅の供給過剰が社会問題になっています。
都道府県の約4分の1にあたる12県で、世帯に対して住宅が20%以上も余っています。
過剰率は山梨が27%と最も高く、四国では全4県が20%以上となっています。
大きな原因は住宅需要を超える供給です。
住宅が20%以上も余っている12県中の11県で地価が下落しており、地元経済への影響が懸念されます。
2023年には日本の世帯数は減少に転じるとの予測があり、過剰率はさらに高まるおそれがあります。
詳しく解説していきます。
住宅の供給過剰
総務省の住宅・土地統計調査で、総世帯数に対して総住宅数がどれだけ多いかを「住宅の過剰率」として評価すると、最新の18年では山梨(27%)が最も高く、和歌山(25%)、長野(24%)が続きました。
栃木や群馬も20%を超えています。
2023年に世帯数が減少に転じる
家余りは地価の動向にも影響しています。
2022年7月1日の基準地価は住宅地の全国平均は、前年比0.1%上昇と1991年以来、31年ぶりにプラスに転じました。
しかし、愛媛では1.5%の下落、鹿児島1.3%、山梨1.2%、和歌山1.1%の下落など、住宅の過剰率が高い地域の多くは前年比マイナスで推移しています。
家余りが続けば空き家の増加による景観や治安の悪化だけにとどまらず、地価の低迷で地域の経済に悪影響が及ぶおそれがあります。
日本は人口減少のなかでも単身世帯の増加などで世帯数は増えてきましたが、国立社会保障・人口問題研究所は2023年に世帯数がピークを迎え、減少に転じると予測しています。
特に住宅の過剰率が高い地域では対策は急務です。
多くの都道府県で家余り
和歌山や高知は高度成長期の人口流入を期待して住宅を増やした結果、1970年代にはすでに家余りが目立っていたところ、他県に先駆けて急速に人口減が進んだため、過剰率の上昇に歯止めがかかっていません。
積極的な新築の影響
山梨や長野は別荘地という県外居住者の需要を考慮する必要はあるものの、首都圏からの人口流入を見込んだバブル期の積極的な新築の影響が今になって表れています。
居住世帯のある住宅に限っても、両県ともに80年以前の建築が4分の1以上あり、老朽化が全国平均より進んでいます。
群馬や栃木などでも同様に90年代などに新築が高水準で続きました。
こうした自治体が家余りを改善するには、新型コロナウイルス禍で広まった郊外でのテレワーク需要の受け皿に空き家を活用するなど、移住取り込みの自治体間競争で優位に立つことが欠かせません。
東日本大震災の影響
人口減少は東北などでも目立つが、住宅供給が相対的に少ないため、過剰率がある程度、抑制されています。
住宅政策に詳しい神戸大学法学部の教授は「東北は東日本大震災で多数の住宅が失われた影響の可能性もある」と分析しています。
空き家対策が急がれる
こうしたなか、データに基づいて住宅の需要や解体の費用を分析して、空き家の所有者らに売却や賃貸、解体といった「住宅リストラ」を勧める自治体もあります。
2018年時点で過剰率が最も低いのが埼玉県です。
さいたま市などに人口が流入する効果もありますが、恩恵が少ない小規模自治体の取り組みも光ります。
空き家バンク
同県の西部、人口8000人弱の横瀬町は将来の人口減少も推計したうえで空き家対策を急いでいます。
空き家の所有者と利用を希望する人を結びつける「空き家バンク」の拡充に加え、21年には民間の企業と連携し、空き家の資産価値を無料で調査するプロジェクトを実施しています。
所有者へ空き家活用の働きかけを強化し、売却や賃貸に至る実績も出ています。
空き家の解体費のシミュレーター
愛知県で空き家率が最も高い南知多町は2021年、民間企業が開発した空き家の解体費のシミュレーターを採用し、空き家の所有者らが無料で使えるようにしました。
町が公費で解体しても割高な例が多いこともあり、所有者からの解体費用の回収が難航しかねません。
シミュレーターで業者間の競争を促せば、解体費用をより安く抑えられる可能性を所有者らに提示します。
まとめ
総務省の住宅・土地統計調査で、住宅の供給過剰が分かりました。
総世帯数に対して総住宅数がどれだけ多いかを「住宅の過剰率」として評価すると、都道府県の約4分の1にあたる12県で、世帯に対して住宅が20%以上も余っています。
住宅の過剰率が高い地域の多くで基準地価が下落しており、地域の経済に悪影響が及ぶおそれがあります。
日本は人口減少のなかでも単身世帯の増加などで世帯数は増えてきましたが、2023年に世帯数がピークを迎え、減少に転じると予測しています。