高校生を対象とした金融教育が活発になってきています。
高校の新しい学習指導要領で2022年度から、家庭科の授業に株式や投資信託など資産形成が加わります。
「必修化」を控え、長期の資産形成に役立つ金融リテラシーを備えた未来の投資家を育もうと、官民の取り組みが広がってきました。
高校生に行われた金融教育
2021年12月、吉祥女子中学・高等学校(東京都武蔵野市)の教室で、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の社員が生徒たちに問いかけました。
「米国のウォルト・ディズニーの株をおよそ30年前に買っていたら、今は何倍になっているでしょう。
- 2倍
- 21倍
- 119倍
正解は(3)の119倍。
「1万円のお年玉を投資していたら、30年あまりで100万円を超えました」という説明に約30人の生徒が驚きの表情を浮かべました。
同校は三菱UFJモルガン社員による出張授業を導入しています。
同社は無償で年間10校程度で実施。
「株の力」がテーマですが、投資を勧める目的ではありません。
株式の役割を投資家や起業家の立場から解説したり、株式投資の仕組みやリスクを説明したりする。
金融教育を受けた高校生の感想
授業を受けた高校1年生の女子生徒は「貯金だけでなく株式投資でもお金が増える可能性があると分かった」「経済のニュースが身近に感じられる」と語ります。
教諭の教師は「教師だけでは伝えきれない金融知識を、現場のプロである証券会社から直接教わる利点は大きい」と言います。
家庭科の授業で金融教育が行われる
4月から高校の教科書に盛り込まれる金融教育。これまでの家庭科では、預貯金が中心の家計管理や商品・サービスの売買契約に重点が置かれてきました。
新しい学習指導要領では生涯の収支計画を考えるため、資産形成の視点から株式や債券、投資信託など金融商品の特徴にも触れます。
学習指導要領の改訂に対応し、日本FP協会(東京・港)は21年7月に高校生向けテキストを刷新しました。
進学や就職後に必要な資産運用などの知識をテーマ別に解説します。
協会ホームページで公開しており、学校で利用する場合は冊子も無償で提供しています。
デジタルを利用した金融教育
デジタルを活用する動きも出ています。
ネットサービスのエイチームは21年10月、資産形成を学ぶ無料のゲームアプリを中京大学などと開発しました。
高校生が「25歳の社会人」という想定でスタート。預金や外国株式、国内債券などへの資産配分を決めます。
すごろく形式で結婚や車の購入といったイベントを経て、65歳のリタイア時に総資産がいくらになるかがゴールです。
金融庁も金融リテラシーの向上に力を入れる
金融庁も高校生向けの教育に力を入れています。
21年からユーチューブで「高校生のための金融リテラシー講座」の配信を始めました。
主な金融商品の特徴や経済全体とのつながりなどを解説。
同庁のホームページで公開する副教材では、毎年の投資額や目標額などを入力すると複利効果でどれだけ資産が増えるかシミュレーションできます。
同庁で金融経済教育を担当者は「専門用語を極力使わず、高校生が資産形成を視覚的に理解できるよう工夫した」と話します。
投資の経験や知識が乏しい教師への対応
教える側にの教師にも戸惑いの声があがっています。
都内のある家庭科教員は「少額投資非課税制度(NISA)すら自分で使った経験はなく、正直なところ教えづらい」と漏らします。
投資の経験や知識が乏しい教員を意識した取り組みも目立ちます。
野村ホールディングスは21年秋、高校の新学習指導要領に準拠する教材を開発しました。
授業で使うスライドや教師向けの台本、用語集などがセットになっており、無償で提供しています。
21年度は約80校が利用する見込みです。
金融庁や日本FP協会も教員向けの教材を出しています。
日本人の金融リテラシーは米国人に劣る
金融広報中央委員会の19年調査では、金融教育を学校で受けたと答えた人の割合は7%と、米国の21%より大幅に低いです。
金融知識に自信があると答えた割合も米国の76%に対し、日本は12%にとどまります。
日銀の調査によると日本の家計金融資産の54%を現預金が占める。株式・投資信託などは14%で、米国の51%とは開きがあります。
「金融教育の遅れが『貯蓄から投資』の流れを抑える一因になっている」との見方は少なくありません。
まとめ
高校の新しい学習指導要領で2022年度から、家庭科の授業に株式や投資信託など資産形成が加わります。
教える側にの教師にも戸惑いの声があがっています。
都内のある家庭科教員は「少額投資非課税制度(NISA)すら自分で使った経験はなく、正直なところ教えづらい」と漏らします。
金融広報中央委員会の19年調査では、金融教育を学校で受けたと答えた人の割合は7%と、米国の21%より大幅に低いです。
金融知識に自信があると答えた割合も米国の76%に対し、日本は12%にとどまります。
日銀の調査によると日本の家計金融資産の54%を現預金が占める。株式・投資信託などは14%で、米国の51%とは開きがあります。
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