日本の個人が手掛けるＦＸ（外国為替証拠金）取引の円・ドル売買額が９月、単月として初めて１０００兆円を超えました。
銀行間の通貨取引に匹敵する水準となります。
理由は、円安・ドル高の進展に加え、日米金利差の拡大による金利差収入が増加しているためです。
従来「逆張り」に動きやすい個人が「順張り」で円売り・ドル買いを続ける要因にもなり、円安の流れを増幅させています。
詳しく解説していきます。
単月のＦＸ取引が初めて１０００兆円を超えた
金融先物取引業協会が２０２２年１０月１７日発表した９月の店頭ＦＸ４９社の売買動向によると、円・ドル取引の売買高は１０９８兆円と、これまで最大だった今年６月の９５５兆円を上回りました。
前年同月比では３．６倍に増えました。
４～９月は前年同期比２．８倍の５１６２兆円でした。
他の通貨ペアを含めた９月の全体の売買高は１３９８兆円と過去最大となりました。
９月の個人の売買高は１日当たりに換算すると約６０兆円に達します。
国際決済銀行（ＢＩＳ）によると、銀行間取引による日本の外国為替市場の１営業日あたりの平均取引高は１９年４月時点で約３７００億ドル（約５５兆円）。
銀行間取引と、個人のＦＸ取引額がほぼ同額になった格好です。
個人の円売りは円安圧力となる
ＦＸ取引は銀行間取引に基づく為替市場に影響します。
店頭ＦＸ取引は個人とＦＸ会社の相対取引になります。
例えば個人が円売り・ドル買いのポジションを構築すると、ＦＸ会社はその個人に対して反対の円買い・ドル売りのポジションを抱えます。
このままではＦＸ会社は自らの為替リスクが膨らむため、銀行などに対して顧客と同じ円売り・ドル買いのポジションを作る「カバー取引」を実施し、為替リスクを解消します。
この取引が銀行間の為替市場に出てくるため、個人の円売りは円安圧力となります。
円を売ってドルを買う理由は主に２つ
１．「利上げを始めた米国」と「金融緩和を続ける日本」
個人の円売りが膨らんだのは、急速な円安・ドル高が進み出した３月以降です。
利上げを始めた米連邦準備理事会（ＦＲＢ）と、大規模な金融緩和を続ける日銀という構図から、円安・ドル高の方向感が強まりました。
中長期目線で円売り・ドル買いを手掛ける個人には非常にやりやすい相場です。
２．「スワップポイント」と呼ぶ売買する通貨の金利差による収入
日米金利差の拡大で「スワップポイント」と呼ぶ売買する通貨の金利差による収入が増えている影響も大きいです。
米国の金利が日本より高いため、ドルを買って翌日まで持ち越せば収入を得られます。
円売り・ドル買い建玉（未決済残高）を１日持ち越した場合の１万ドル当たりのスワップポイントは３月の１０～２０円程度から足元では１００円超に膨らんでいます。
個人のドル買い目線は崩れていない
従来、円安が加速すると個人は反発を見込み、逆張りの円買い・ドル売りが広がっっていましたが、足元でその動きは乏しいです。
依然としてドルの先高観が鮮明なことに加え、ドルを売ればスワップポイントの支払いが必要となるため、逆張りの円買い・ドル売りが出にくいです。
ＱＵＩＣＫが１７日に発表した前週末時点の店頭ＦＸ５社のポジション動向では、円買い・ドル売りの建玉が半年ぶりに円売り・ドル買いを上回りました。
前週末１４日に１ドル＝１４８円台後半と３２年ぶりの円安水準まで進み、利益確定が広がったためです。
ただ、円高になったタイミングで再びドルを買う動きは強まる可能性は高いので、個人のドル買い目線は崩れていません。
日本では一般の主婦まで取引するほど活発化
日本のＦＸ投資家が「ミセス・ワタナベ」と呼ばれ、存在感を高めたのは２００７年ごろです。
一般の主婦まで取引するほど活発化し、当時の渡辺博史財務官（現国際通貨研究所理事長）と比べ、「財務官よりも相場に対する影響力を持つ存在」として注目されました。
足元では神田真人財務官らが主導する介入に逆らうように活発に円売りを手掛けるミセス・ワタナベ。
政府・日銀が為替相場を制御することの難しさを示しているともいえます。
まとめ
日本の個人が手掛けるＦＸ（外国為替証拠金）取引の円・ドル売買額が９月、単月として初めて１０００兆円を超えました。
銀行間の通貨取引に匹敵する水準となります。
円を売ってドルを買う理由は主に２つ
- 「利上げを始めた米国」と「金融緩和を続ける日本」
- 「スワップポイント」と呼ぶ売買する通貨の金利差による収入
従来、円安が加速すると個人は反発を見込み、逆張りの円買い・ドル売りが広がっっていましたが、足元でその動きは乏しいです。
依然としてドルの先高観が鮮明なことに加え、ドルを売ればスワップポイントの支払いが必要となるため、逆張りの円買い・ドル売りが出にくいです。
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