楽天グループが2月14日発表した2022年12月期の連結決算は最終損益が3728億円の赤字となりました。
赤字は過去最大で4期連続です。
携帯電話事業で基地局などへの巨額の投資が楽天グループ全体の財務を圧迫しています。
モバイル事業単体としては「0円プラン」廃止による契約減が止まりません。
財務改善へ他社からの出資受け入れなども検討しいています。
人員や店舗の整理などコスト削減やKDDIから借りている回線費用の終了などで収益性の改善を急ぎます。
詳しく解説していきます。
動画でも解説しています
携帯電話事業の営業損益は4928億円の赤字
最終赤字は前の期の1338億円から3倍近くに拡大しました。
売上高にあたる売上収益は前の期比15%増の1兆9278億円でした。
「楽天市場」などを含むインターネットサービス事業やクレジットカード・銀行などの金融事業が売上収益の伸びをけん引していますが、携帯電話事業の赤字が利益を吹き飛ばしています。
携帯電話事業の営業損益は4928億円の赤字(前の期は4211億円の赤字)で、全体の営業損益は3638億円の赤字(前の期は1947億円の赤字)に終わりました 。
三木谷浩史会長兼社長は同日開いた決算説明会で「有利子負債が膨らんでいる。(財務状況を改善するため)楽天銀行や楽天証券の株式上場準備を進めていく」と述べました。
他社からの出資受け入れなども含めて「戦略的業務提携や外部資本の活用も柔軟に検討したい」と語りました。
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楽天グループ1338億円の赤字!携帯通信事業が足を引っ張る
楽天グループの業績が悪化しています。2022年2月14日発表した2021年12月期の連結決算(国際会計基準)は最終損益が1338億円の赤字となり、過去最大の赤字となりました。基地局整備などで携帯通信事 ...
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赤字の原因は1兆円規模となった基地局などへの設備投資
楽天モバイルの最大の課題は累計で1兆円規模となった基地局などへの設備投資でしょう。
主に借り入れや社債発行で賄っており、金融事業を除く社債および借入金は2022年12月末に約1兆7600億円となりました。
携帯電話事業に本格参入する前と比べて約8割増加しています。
財務の悪化を食い止めるには負債を増やさない資本性資金の調達が不可欠となっています。
楽天は2022年11月、傘下の楽天証券ホールディングス(HD)が保有する楽天証券株の約2割をみずほ証券に売却し775億円を確保しました。
しかし、当初目指していた楽天銀行の2022年内の上場は市場環境の悪化を受けて延期しています。
米格付け会社のS&Pグローバルは資本性資金の調達が不足していると判断。
2022年12月に楽天の長期発行体格付けを「ダブルB」に1段階引き下げました。
「ダブルBプラス」以下は投機的水準にあたります。
赤字は継続する見通し
三木谷社長は「設備投資は一巡しつつある」と話していますが、2023年12月期も前の期とほぼ同水準の3000億円規模の赤字を見込んでいます。
2024年12月期は1500億円規模の赤字に減少することを見込んでいますが、依然として資金確保に向けた社債発行が続きそうです。
2023年1月には、ドル建て無担保優先債4.5億ドル(約590億円)を、2022年11月の5億ドルに加えて追加発行しました。
最終利回りは12%にも上ります。
同月には個人向けの普通社債2500億円も別途起債しました。
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楽天グループが12%の社債発行 理由は赤字の携帯事業
楽天グループが2022年11月30日に発行するドル建て社債の利回りは10%超と、2019年に起債したドル建て債(3%台)を大きく上回ります。携帯事業の基地局整備などに投じた費用は総額1兆円を超え、今後 ...
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「0円プラン」の廃止で契約数が減少
携帯事業の収益は契約者数と契約あたりの月間平均収入のかけ算によって算出されます。
楽天モバイル事業の平均収入は上がっていますが、契約数が減少しています。
2022年5月にデータ使用量が月間1ギガバイトまで無料という「0円プラン」の廃止を発表しました。
4月末に500万を超えていた契約数の減少が止まらず、12月末は449万となりました。
三木谷氏は契約数の目標値として1200万件を掲げていますが、目標の達成には起爆剤が必要でしょう。
一契約当たりの平均収入は2022年10~12月に1805円まで上昇しました。
0円廃止で最低料金を980円(税抜き)にした効果ですが、それでもNTTドコモなど携帯大手3社の半分程度にとどまっています。
コスト削減を急いでいる
通信料収入が伸び悩むなかコスト削減を急いでいます。
グループ会社から携帯電話事業に招集していた従業員を元の職場に戻し人件費を削減するほか、販売店を4月末までに2割閉鎖します。
自社通信網の拡大で、KDDIから借りている回線費用も減ります。
設備投資が一巡すれば、これらの取り組みも合わせて通信網の運用コストを2023年末までに月あたり約150億円削減できる見込みです。
まとめ
楽天グループが2月14日発表した2022年12月期の連結決算は最終損益が3728億円の赤字となりました。
赤字は過去最大で4期連続です。
「楽天市場」などを含むインターネットサービス事業やクレジットカード・銀行などの金融事業が売上収益の伸びをけん引していますが、携帯電話事業の赤字が利益を吹き飛ばしています。
楽天モバイルの最大の課題は累計で1兆円規模となった基地局などへの設備投資でしょう。
主に借り入れや社債発行で賄っており、金融事業を除く社債および借入金は2022年12月末に約1兆7600億円となりました。
三木谷社長は「設備投資は一巡しつつある」と話していますが、2023年12月期も前の期とほぼ同水準の3000億円規模の赤字、2024年12月期は1500億円規模の赤字になることを見込んでいます。
2022年5月にデータ使用量が月間1ギガバイトまで無料という「0円プラン」の廃止を発表しました。
モバイル事業の黒字化に欠かせない契約者数ですが、4月末に500万を超えていましたが、12月末は449万となりました。
三木谷氏は契約数の目標値として1200万件を掲げています。