信用格付けは会社がお金を生み出す力に着目し、社債や借入金など、債務の元本や利息をちゃんと支払うことができるのかどうか、会社の信用力をひと目で表したものです。
格付けは会社の信用力を見る物差しです。格上げされた会社を探すと、意外なお宝銘柄に出会えるかもしれません。
信用格付けとは
信用格付けとは、国や企業が発行する債券の信用力や元利金の支払い能力の安全性などを総合的に分析しランク付けしたものです。
アルファベットなどわかりやすい記号で表示されています。
格付けは民間の格付け会社によって行われます。投資をする際、信用リスクを測る重要な指標のひとつとなるます。
ただし、格付け会社によって格付けに差があったり、経済状況に応じて格付けが見直されたりする場合もあります。
個別の債券やその発行体の債務全体に対する評価に加え、金融機関に対する預金や保険金の支払い能力の格付けが行われます。
ストラクチャードファイナンス商品(仕組債など)や投資信託についての格付けも行っています。
一般的には略して「格付け会社」と呼び、「格付け機関」ともいいます。
2007年に表面化したサブプライムローンに端を発した世界的な金融危機の際、信用格付けの内容が問題視されました。
このため、10年の金融商品取引法改正で、独立性、公正性などの観点から、格付け会社としての体制が十分に整備された会社については金融庁に登録され、監督下に置かれることになりました。
信用格付け評価と株価は一致しない
格付けと株価の評価は一致するわけではなく、格付けの高い会社が必ずしも株価が高いわけではありません。
株価は会社の利益や売り上げの伸びになどの成長性に影響を受けるものですが、格付けは会社の信用力を見るのです。
日本を代表する会社のソフトバンクグループは利益・売り上げを伸ばし続けていますが、格付けは、S&Pとムーディーズの評価ではジャンク扱いとなっています。
不況時では格付け評価の高い会社が注目される
不況時では倒産する会社が増えます。そんな時に注目されるのは、格付け評価の高い会社です。
金融不安時には格付けが株価を動かすといわれ、信用格下げ会社の株価は大きく下げることがあります。
四季報の巻末に掲載されてある格付けを見れば、意外なお宝銘柄に出会えるかもしれません。
会社四季報で掲載される信用格付け会社
会社四季報では金融庁指定の格付機関のうち、主要四機関の、四季報発売前月下旬時点の格付を収録しています。
四季報の巻末に、上場会社の信用格付け情報が掲載されています。
- S&Pグローバル・レーティング・ジャパン(S&P)
- ムーディーズ・ジャパン(MDY)
- 日本格付研究所(JCR)
- 格付投資情報センター(R&I)
四季報が初めての方には、下記の記事をおすすめします。
S&Pグローバル・レーティング・ジャパン(S&P)
S&Pグローバル・レーティング・ジャパン(S&P)の表示記号と評価内容は下記の通りです。
記号 | 評価内容 |
AAA | 債務者がその金融債務を履行する能力は極めて高い |
AA | 債務者がその金融債務を履行する能力は非常に高く、最上位の格付けとの差は小さい |
A | 債務者がその金融債務を履行する能力は高いが、上位2つの格付けに比べ、事業環境や経済状況の悪化の影響をやや受けやすい |
BBB | 債務者がその金融債務を履行する能力は適切であるが、事業環境や経済状況の悪化によって債務履行能力が低下する可能性がより高い |
BB | 債務者は短期的により低い格付けの債務者ほど脆弱ではないが、高い不確実性や、事業環境、金融情勢、または経済状況の悪化に対する脆弱性を有しており、状況によってはその金融債務を期日通りに履行する能力が不十分となる可能性がある |
B | 債務者は現時点ではその金融債務を履行する能力を有しているが、「BB」に格付けされた債務者よりも脆弱である。事業環境、金融情勢、または経済状況が悪化した場合には債務を履行する能力や意思が損なわれやすい |
CCC | 債務者は現時点で脆弱であり、その金融債務の履行は、良好な事業環境、金融情勢、および経済状況に依存している |
CC | 債務者は現時点で非常に脆弱である |
R | 財務上の問題が理由で規制当局の監督下に置かれている債務者に付与される格付け |
SD、D | 債務者の金融債務の少なくとも一部(格付けの有無を問わない)が履行されていないことを示す |
AAからCCCまでの格付けには、プラス(+)記号またはマイナス(-)記号が付与されることがあり、各格付けの中での相対的な強さを表します。
(C)は格付けの見直しを必要とする特別な出来事または短期的なトレンドに焦点をあてた格付けの方向性に関するS&Pの意見を示すもので、(Cポ)は格上げの可能性、(Cネ)は格下げの可能性、(C不)は格上げ、格下げ、格付け据え置きのいずれの可能性もあることを示します。
(ポ)、(ネ)、(安)、(不)、(N)は中期的に格付けがどの方向に動きそうかを示すもので、(ポ)=ポジティブは上方に向かう可能性、(ネ)=ネガティブは下方に向かう可能性、(安)=安定は安定的に推移しそうであること、(不)=方向性不確定は上方にも下方にも向かう可能性があること、(N)は方向性に意味がないことを表します。
銀行や証券等についてはカウンターパーティ、生損保については保険財務力の格付けです。
ムーディーズ・ジャパン(MDY)
ムーディーズ・ジャパン(MDY )の表示記号と評価内容は下記の通りです。
記号 | 評価内容 |
Aaa | 信用力が最も高いと判断され、信用リスクが最低水準にある債務に対する格付け |
Aa | 信用力が高いと判断され、信用リスクが極めて低い債務に対する格付け |
A | 中級の上位と判断され、信用リスクが低い債務に対する格付け |
Baa | 中級と判断され、信用リスクが中程度であるがゆえ、一定の投機的な要素を含みうる債務に対する格付け |
Ba | 投機的と判断され、相当の信用リスクがある債務に対する格付け |
B | 投機的とみなされ、信用リスクが高いと判断される債務に対する格付け |
Caa | 投機的で安全性が低いとみなされ、信用リスクが極めて高い債務に対する格付け |
Ca | 非常に投機的であり、ディフォルトに陥っているか、あるいはそれに近い状態にあるが、一定の元利の回収が見込める債務に対する格付け |
C | 最も格付けが低く、通常、ディフォルトに陥っており、元利の回収の見込みも極めて薄い債務に対する格付け |
AaからCaaまでの格付けに1、2、3の符号を付け、各格付けの中で1が上位、2が中位、3が下位にあることを示します。
↑印は格上げの方向、↓印は格下げの方向、?印は方向未定で格付けを見直し中であること、(ポ)=ポジティブ、(ネ)=ネガティブ、(安)=安定的、(検)=検討中は格付けの中期的な方向性に関するムーディーズの意見を表します。
銀行については長期預金、生損保については保険財務の格付け、金融持ち株会社に格付けが付与されていない場合は中核子会社の格付けです。
日本格付研究所(JCR)
日本格付研究所(JCR) の表示記号と評価内容は下記の通りです。
記号 | 評価内容 |
AAA | 債務履行の確実性が最も高い |
AA | 債務履行の確実性は非常に高い |
A | 債務履行の確実性は高い |
BBB | 債務履行の確実性は認められるが、上位等級に比べて、将来、債務履行の確実性が低下する可能性がある |
BB | 債務履行に当面問題はないが、将来まで確実であるとは言えない |
B | 債務履行の確実性に乏しく、懸念される要素がある |
CCC | 現在においても不安な要素があり、債務不履行に陥る危険性がある |
CC | 債務不履行に陥る危険性が高い |
C | 債務不履行に陥る危険性が極めて高い |
LD | 一部の債務について約定どおりの債務履行を行っていないが、その他の債務については約定どおりの債務履行を行っているとJCRが判断している |
D | 実質的にすべての金融債務が債務不履行に陥っているとJCRが判断している |
AAからBまでの格付け記号には同一等級内での相対的位置を示すものとして、プラス(+)もしくはマイナス(-)の符号による区分があります。
p印は公開情報に基づき当該債務者(発行体)の了解を得た上で付与する格付け、#印はクレジットモニター(見直し作業中)で、(ポ)はポジティブ、(ネ)はネガティブ、(不)は方向性不確定で見直し中であること、#印のない(ポ)、(ネ)、(安)、(不)、(複)=方向性複数は格付けが中期的にどの方向に動き得るかという見通しを示します。
格付投資情報センター(R&I)
格付投資情報センター(R&I)の表示記号と評価内容は下記の通りです。
記号 | 評価内容 |
AAA | 信用力は最も高く、多くの優れた要素がある |
AA | 信用力は極めて高く、優れた要素がある |
A | 信用力は高く、部分的に優れた要素がある |
BBB | 信用力は十分であるが、将来環境が大きく変化する場合、注意すべき要素がある |
BB | 信用力は当面問題ないが、将来環境が変化する場合、十分注意すべき要素がある |
B | 信用力に問題があり、絶えず注意すべき要素がある |
CCC | 信用力に重大な問題があり、金融債務が不履行に陥る懸念が強い |
CC | 発行体のすべての金融債務が不履行に陥る懸念が強い |
D | 発行体のすべての金融債務が不履行に陥っているとR&Iが判断する格付け |
AA格からCCC格までの格付けについて、上位格に近いものにプラス(+)、下位格に近いものにマイナス(-)の表示をすることがあります。
op印は格付け関係者の依頼によらずR&Iの判断で付与した格付け、()内はレーティング・モニター(見直し作業中)の対象として格付けを見直していることを示し、格上げ方向、格下げ方向、方向は未定の3つがある。
(ポ)=ポジティブ、(ネ)=ネガティブ、(安)=安定的は格付けの方向性を示し、中期的な方向性についてのR&Iの意見を表します。