サイクル分析は、価格が一定の期間ごとに高値をつけたり安値をつけたりする周期性があると考えて、研究が進められてきました。
しかし、現在まで、あまり良い成果が出たとはいえません。
物理学を応用して、価格推移の中に明確な周期性があるかどうかを調べることができますが、そのような周期性が見当たらないケースも多く見られます。
景気循環には規則性があるとされ、それに呼応して株価などの推移にも周期性があるといわれていますが、その周期は一定のものではありません。
景気循環は、その時々の状況に応じて、長くなったり短くなったりします。
3月末や12月末などの決算末には、機関投資家などが保有資産の見直しや評価替えを行うので売りが出やすく、相場は上がりにくいといわれます。
反対に、1月や4月の期初には買いが出やすいので、上昇しやすいといわれます。
同じような経験則は、1月単位や1週間単位でも起こります。
しかし、いずれにおいても、相場の基調が強いか弱いかによって、これらの経験則は明瞭だったり不明瞭だったりします。
一方、これらとは別に新しいサイクル分析も出てきました。
音声信号から雑音を取り除く技術などを応用して、価格推移から本質的な変動を抽出しようという試みです。
ここでは、比較的計算が簡単なものを紹介します。
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フィッシャー変換指標(FTI:Fisher Transform Indicator)
出典:TRSDING TECHNOLOGIES
フィッシャー変換指標(FTI)は、ジョン・F・エーラーズが2002年に発表した手法です。
価格推移は、一般にはガウスの確率密度分布(正規分布)に従っていると考えられていますが、実際にはそうではありません。
平均から大きく離れた値の出現率が、正規分布の想定より高いこと(ファットテール)が問題だとエーラーズは考えました。
しかし、フィッシャー変換を用いることで、価格推移をガウス分布に近似させ、RSIのように正規化した指標にすることができます。
FTIは、価格推移と比較してまれにしかピークやボトムを形成しません。
しかし、形成されるピークやボトムは非常に明確なので、価格推移の方向転換をとらえるシグナルとして有効に機能します。
計算方法
$$中値=(高値+安値)÷2$$
$$Value=0.33×2{(中値-10日間の最安値)÷(10日間の最高値-10日間の最安値)-0.5}+0.67×前日のValue$$
もし、Value0.99>なら、Value=0.999
もし、Value<-0.99なら、Value=-0.999
$$FTI=0.5×LOG{(1+Value)÷(1-Value)}+0.5×前日のFTI$$
腺の交差に注目
数値が下降しているときは下降トレンド、数値が上昇しているときは上昇トレンドにあると判断します。
また、リアルタイムのFTIに1~数日遅行させたFTIをトリガーとして組み合わせ、指標の大底圏でFTIがトリガーを上回ってゴールデン・クロスしたら買いシグナル、指標の天井圏でFTIがトリガーを下回ってデッド・クロスしたら売りシグナルとします。
エーラーズは電気技術師で物理学を応用した指標を数多く考案しました。
なかでも有名なのが最大エントロピー・スペクトル分析(MESA:Maximum Entropy Spectral Analysis)を利用した適合移動平均で、MAMA(MESA Adaptive Moving Average)という略称で呼ばれるものです。
エーラーズの方法は、コンピューターを利用した自動売買(アルゴリズム取引)の売買シグナルとして考案されたものです。
逆フィッシャー変換指標(IFTI:Inverse Fisher Transform Indicator)
ジョン・F・エーラーズが2004年に発表した指標で、既存の指標に比べて売り買いのシグナルが明白になるようにする目的で開発されました。
ストキャスティクスRSIは、RSIを元に計算したストキャスティクスで、RSIが必ずしも0~100で推移するとは限らない欠点を、必ず0~100で推移するように改善したものです。
同じ発想でRSIを元に逆フィッシャー変換を行うことで、売り買いのシグナルを分かりやすくしました。
基にする指標はRSIでなければならないわけではなく、他のオシレーターでも問題ありません。
$$RSI=過去5日間で前日比上昇した日の上昇幅の合計÷(過去5日間の前日比騰落幅の合計)×100$$
値1=0.1×(RSI-50)
値2=値1の9日加重平均。指数平滑移動平均を用いてもよい。
$$IFTI=(Exp(2×値2)-1)÷(Exp(2×値2)+1)$$
エーラーズは、RSIの代わりにサイバー・サイクル(CC、Cyber Cycle)という指標も用いてCCのIFTIを計算しています。
その計算方法は以下のとおりです。
$$中値=(高値+安値)÷2$$
α=0.07
$$平滑値=(中値+2×前日の中値+2×2日前の中値+3日前の中値)÷6$$
$$CC=(1-5×α)×(1-5×α)×(平滑値-2×前日の平滑値+2日前の平滑値)+2×(1-α)×前日のCC-(1-α)×(1-α)×2日前のCC$$
当日が6日目以前なら、
$$CC=(中値-2×前日のCC+2日前のCC)÷4$$
$$ICC=(Exp(2×CC2)-1)÷(Exp(2×CC2)+1)$$
天井圏、大底圏からの反転に注目
基本的には、±0.5をまたいだタイミングを売買シグナルとします。
たとえば、IFTIが大底圏から上昇して-0.5を上回ったタイミング、もしくはさらに上昇して+0.5を上回ったタイミングを買いシグナルとします。
一方、IFTIが天井圏から下落して+0.5を下回ったタイミング、もしくはさらに下落して-0.5を下回ったタイミングを売りシグナルとします。