この記事では、「中国企業が抱える社債問題」について解説していきます。
急速な経済成長の陰に隠れていた社債問題が表に出てきました。
世界経済に大きな影響を与える中国の問題です。
日本にとっても対岸の火事ではありません。
中国企業の社債が23年までに230兆円
世界の社債市場で中国企業の債務問題に焦点が当たっています。
長年にわたって公共事業を手掛けてきた、土木や建築の業界で債務が膨らんできています。
債務健全化を目指す政府は従来のように国有企業を支援しないとの見方から、外貨建て債に売り圧力がかかり上乗せ金利が上昇しています。
債務不履行が増える「ハードランディング(強行着陸)」となれば世界の市場を揺らしかねません。
中国企業が発行した社債のうち、2023年までの3年間に満期を迎える総額は2兆1400億ドル(230兆円超)に達します。
18~20年の1・6倍の規模です。債務の返済が重くのしかかります。
最終的な償還額はさらに増える見込み
中国国有の不良債権受け皿会社、中国華融資産管理が存続をかけた資金繰り対策に追われています。
傘下企業が融資1億ドルの返済を8月末まで延長することで銀行と合意しました。
南京熊猫電子など保有株の売却も急いでいます。
華融はグループで3300億元近い社債の発行残高を抱えるが、6割近くが23年までに満期を迎えます。
償還がピークを迎えるのは華融だけではありません。
金融情報会社リフィニティブのデータによると21年の償還額が7480億ドルと最も多く、22年が6690億ドル、23年が7270億ドルと続きます。
中国企業が発行する社債は満期までの期間が1~3年と比較的短いものが多いです。
社債発行が続くのに伴い、最終的な償還額はさらに増える見込みです。
債務を多く抱えるのは大手国有企業
債務を多く抱えるのは大手国有企業です。
政府直轄の中国国家鉄路集団は23年末までに900億ドル弱、配送電を担う国家電網は約140億ドルが償還を迎えます。
両社とも未上場で、コスト意識の希薄さが債務膨張につながっています。
公共事業の受け皿となってきた土木、建築に国家鉄路、国家電網の2社を加えた償還額は6000億ドルと全体の3割を占めます。
習近平指導部は、債務を減らしたい考え
国有企業の過剰債務が政府の信用に悪影響を及ぼすのを避けるため、習近平(シー・ジンピン)指導部は「暗黙の政府保証」を縮小させたいとの意向を持っています。
しかし、 元建て債の債務不履行は1~4月で950億元と、過去最高を更新するペースで推移しています。
社債の償還が累増するなかで政府主導の支援が細れば、不履行の一段の増加は避けられません。
債務不履行が増えている
国務院発展研究センターの賈〓副研究員は「中国企業は投資効率が低下するなかでも資産取得を増やしてきた」と指摘します。
元建て債の償還増は中国の債務膨張の象徴となっています。銀行融資の変形という側面があり、投資は国内勢が中心です。
海外投資家にとって重要なのは1割弱をしめる外貨建て債の動向で、償還額は23年までに1720億ドルにのぼります。
加えて、気がかりなのは外貨建て債でも債務不履行が増えていることだ。
リフィニティブなどによると20年以降に少なくとも10本以上のドル債が債務不履行を起こしています。
北京大学系のIT(情報技術)大手、北大方正集団は20年2月に会社更生手続きに相当する「重整」に入り、複数のドル建て債で元利払いができなくなりました。
海外投資家が法的な手続きに
北大方正は傘下企業が発行したドル債の一部に「キープウェル条項」を付与していました。
同条項は一般に、親会社が子会社の財務を良好な状態に保つことを約束する内容です。
しかし、北大方正は同条項が償還を保証するものではないとして弁済の対象から外し、一部の海外投資家が法的な手続きに入っているとされています。
国有半導体の紫光集団もドル債の債務不履行を繰り返しており、2月には米シティグループの香港法人が利払いや償還を求めて訴訟を起こしました。
「中国企業が債務不履行を決断するハードルが低くなっており、国債や政策銀行債しか安心して投資できない」といった声が漏れ始めています。