日本銀行は金融政策によって国の景気をコントロールしています。バブルが弾けて「失われた20年」などのような事が起きないように目を光らせ、手段を行使しています。
この記事を読めば日本銀行の活動がわかり、景気について理解することができます。
金融政策とは
金融政策は中央銀行が行う金融面からの経済政策。財政政策とならぶ、マクロ経済政策の柱です。
金融政策は経済を持続的に拡大させることが最終的な目的です。
物価や通貨価値の安定、さらに景気対策の一環として、「金融引き締め」・「金融緩和」を行います。
日本銀行は、わが国の中央銀行として、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資するため、通貨および金融の調整を行うこととされています(日本銀行法第1条、第2条)。調節にあたっては、公開市場操作(オペレーション)などの手段を用いて、長短金利の誘導や、資産買い入れ等を行っています。
こうした中央銀行が行う通貨および金融の調節を「金融政策」といいます。
引用:日本銀行
景気の基本
景気は循環します。正確には「させる」と言ったほうが正しいです。
パターン①
不景気
⇩
パターン②
金融緩和
⇩
パターン③
好景気
⇩
パターン④
金融引き締め
⇩
パターン①に戻る。
なぜ好景気のままではダメなのか
景気の過熱が行き過ぎるとどうなるか、それはバブル景気がどういう結果を招いたのかを理解する必要があります。
好景気が行き過ぎると物価の価格上昇が始まり、企業は利益を上げ金余りの状態になります。
溢れたお金は労働者にも渡り、投機が起こり色々な物に資金が向かいます。
日本のバブル経済では不動産や株に資金が集中し、本来の価値を無視した水準まで価格が吊り上がりました。
吊り上がった価格はいずれ適正価格以下に急落、「バブルの崩壊」が起こります。
バブルの上昇幅が大きければその反動による不況も深刻なものになります。
金融政策決定会合で決められる
金融政策は日本銀行の金融政策決定会合で決められます。
会合は年8回、各会合とも2日間開催されます。
議事内容は4つ
- 金融市場調整方針
- 基準割引率、基準貸付利率および預金準備率
- 金融政策手段(オペレーションにかかる手形や債券の種類、条件の種類)
- 経済・金融情勢に関する基本見解
金融市場調整方針
日本銀行は金融市場情勢を検討し、金融市場調整方針のもと、日々、金融市場において資金の吸収を行っています。
金融市場調整の主な手段は、金融機関を相手に行う資金の貸付けや国債などの売買です。
基準割引率、基準貸付利率および預金準備率
日本銀行が民間の金融機関に直接資金を貸し出すときの基準金利。
2001年2月に導入された補完貸付制度に適用される金利で、金融市場における短期金利(コールレート)の変動上限になっています。
以前までは公定歩合と呼ばれ、日本銀行の政策金利として機能しており、預金金利や為替レートにも強い影響を与えていたが、政策金利が無担保コール翌日物金利(オーバーナイト・レート)に変更され、公定歩合に「政策金利」としての意味合いがなくなったことを受けて、日銀が2006年8月に「公定歩合」という呼称を「基準割引率および基準貸付利率」に変更。
「預金準備率」=金融機関は日銀に所定の額を預金することが義務付けられています 。
金融政策手段
日本の金融市場調節 をする「資金供給オペレーション」「資金吸収オペレーション」の手段を決める。
経済・金融情勢に関する基本見解
金融政策決定会合において、金融政策判断の基礎となる経済及び金融の情勢に関する基本的見解を議題にする。
金利の変更
日本銀行が決める「基準割引率、基準貸付利率」を上限に無担保コール翌日物の金利が決まります。
無担保コール翌日物の金利によって個人や会社の普通預金などの金利も決まります。
無担保コール翌日物とは
短期金融市場におけるインターバンク市場で、コール市場の代表的な取引。
金融機関同士が「今日借りて、明日返す」といったような1日で満期を迎える、借り手が貸し手に対して担保を預けずに行う取引。この金利を「無担保コール翌日物金利」という。
日本銀行が金利を変えると
金利を上げると
景気過熱 ⇩ 日本銀行が金利を上げる ⇩ 銀行の貸出金利が上がる ⇩ 企業が銀行から融資を受けにくくなる ⇩ 企業の活動が停滞される ⇩ 経済活動が抑制される |
金利を下げると
景気が低迷 ⇩ 日本銀行が金利を下げる ⇩ 銀行の貸出金利が下がる ⇩ 企業が銀行から融資を受けやすくなる ⇩ 企業の活動が活発になる ⇩ 経済活動が活発になる |
金融政策手段 売買オペレーション
オペレーションには、大きく分けて、日本銀行による資金の貸付けや国債の買入れなど、「金融市場に資金を供給するオペレーション(金融緩和)」と、日本銀行が振り出す手形の売出しや日本銀行が保有している国債の買戻条件付売却など、「金融市場から資金を吸収するオペレーション(金融引き締め)」があります。
資金供給オペレーション「金融緩和」
種類 | 概要 |
共通担保資金供給オペ | 「適格担保取扱基本要領」に基づき金融資産を担保として資金を供給する。 |
国債買入 | 利付国債を買い入れることによって資金を供給する。 |
国庫短期証券買入オペ | 国庫短期証券を買い入れることによって資金を供給する。 |
CP・社債買入 | CPや社債等を買い入れることによって資金を供給する。 |
ETF・J-REIT買入 | ETFやJ-REITを買い入れることによって資金を供給する。 |
国債買現先オペ | 利付国債や国庫短期証券を、予め定めた期日に売り戻す条件を付して 買い入れることによって資金を供給する。 |
CP等買現先オペ | 「適格担保取扱基本要領」に基づきCP等を、予め定めた期日に 売り戻す条件を付して買い入れることによって資金を供給する。 |
資金吸収オペレーション「金融引き締め」
種類 | 概要 |
手形売出オペ | 満期が3か月以内に到来する手形であって、日本銀行が振出人、受取人、 支払人を兼ねるものを、日本銀行が売却することによって資金を吸収する。 |
国債売現先オペ | 利付国債や国庫短期証券を予め定めた期日に買い戻す条件を 付して売却することによって資金を吸収する。 |
国庫短期証券売却オペ | 保有する国庫短期証券を売却することによって資金を吸収する。 |
まとめ
日本銀行は、景気不況時や加熱時に物価を安定させ、経済の健全な発展のために金融の緩和や金融引き締めをおこない、景気刺激策・景気抑制策を実施しています。
手段は主に2つで、
- 金利の変更
- 市場への資金供給・吸収(オペレーション)
になります。
金融緩和を続けている2019年12月現在、企業の内部留保は6年連続で過去最高を更新。(446兆4844億円 )
金融政策によって企業活動は順調ですが、目標に掲げている2%の物価上昇は達成されず、個人消費も芳しくありません。
企業が稼いだお金が「設備投資」や「賃金アップ」へ向かうには?
消費者の「購買意欲」を上げるには?
日本銀行の金融政策だけですべての歯車を回すのは難しいようです。