この記事では、「自己破産が認められる為の2つの条件」を解説していきます。
自己破産は債務整理の最後の手段ともいわれており、借金返済生活から抜け出して新たなスタートを切るきっかけとなり得るものです。
借金を背負う可能性は誰にでもあります。
もしもの事態に備えて、今から自己破産が認められる条件を把握しておきましょう。
自己破産が認められる為の2つの条件
自己破産は望めば誰でもできるわけではなく、裁判所に認められる必要があります。
裁判所に自己破産が認められる為の条件は下記の2つです。
- 支払不能の状態である
- 免責不許可事由にあたらない
それぞれわかりやすく解説していきます。
1.支払不能の状態である
破産法15条1項は、「債務者が支払い不能にあるときは、裁判所は、申立てにより、決定で、破産手続きを開始する」と規定しています。
つまり、自己破産では借金の返済ができない状態にあるかどうかが問題なのです。
また、債務者が支払い停止したときは、支払不能にあるものとして推定されます(15条2項)。
支払不能の定義については、2条11項で、「債務者が、支払い能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に返済することができない状態を言う」と規定しています。
そして、支払不能であるかどうかは、裁判官により、債務者の財産、信用、労力、技能、年齢、性別、職業、給料などを総合的に判断して、ケースバイケースで判断されます。
支払不能であると判断される目安
通常のサラリーマンの場合、税引き後の手取り収入から住居費を差し引いた額の3分の1を超える返済になると、支払不能であると言われています。
たとえば、手取り年収350万円で住居費が50万円かかる場合で考えてみると、下記のようになります。
$$(350万円-50万円)×1/3=100万円…月額83,000円$$
つまり、毎月の返済額が83,000円を超えるようであれば、支払不能として自己破産が認められる可能性が高いということになります。
また、一般的なサラリーマンの場合、借入額が年収の1.5倍を超えると自己破産の手続きをとった方がいいとされています。
借入額が130万円で自己破産が認められたケース
少額の借金では支払不能と認められないことが多いのですが、病気で働くことができない、あるいは生活保護以外に収入が無いなどの事情があれば、比較的少額の借金であっても、支払不能と認められる可能性があります。
なお、130万円の借金で支払い不能の状態にあると認められて、免責が許可された判例があります。
また、債権者としては、破産手続開始の決定後に免責(借金の免除)が得られなければ意味がありません。
免責されるかどうかは、別途審理されますが、自己破産を申し立てる債務者は免責されるかどうかも検討しておかなければなりません。
そうでなければ、破産者になったままで、免責されずに借金は残るという結果になりかねないからです。
2.免責不許可事由にあたらない
自己破産の最大のメリットは免責を得られることです。つまり、借金(債務)を帳消しにしてもらえることです。
しかし、自己破産を申し立てれば、必ず免責が許可されるというわけではありません。
破産手続が開始されると、破産者が負っていた借金について法律上の支払義務を免除するかどうかを決める手続に入ります。これを免責手続といいます。
この手続で、裁判所が免責許可決定を出しますと、借金の支払義務が免除されます。
しかし、ギャンブルや浪費によって多額の借金を作ったなど、不誠実な破産者であることを示す事情があるときには、免責許可決定がもらえない(免責が許可されない)ことがあります。
このように、免責が許可されなくなってしまう事情のことを「免責不許可事由」といい、この免責不許可事由は、法律で決められています。
免責不許可事由の読み方は=めんせきふきょかじゆうです。
免責不許可事由になる具体例
法律で決められた免責不許可事由のうち、実際によく問題になるものは、下記のとおりです。
- ギャンブルや浪費
- 転売行為
- 破産管財人に協力しない
- 財産を隠す
- 債権者を明かさない
- 債権者を平等に扱わない
- 7年以内に免責を受けたことがある
それぞれわかりやすく解説していきます。
ギャンブルや浪費
免責不許可事由の代表例ともいえるのが、ギャンブルや浪費による借金です。
ギャンブルといっても、競馬やパチンコだけでなく、不動産投資やFX、株式投資なども含まれます。
また、多額の借金を遊興補(遊びや趣味・娯楽、宴会等の飲食に使った金銭)に充てていたような場合も、免責不許可事由に該当します。
転売行為
ローンやクレジットカードで購入した商品を、ローン返済中に転売し、現金化するような行為も免責不許可事由に該当します。
破産管財人に協力しない
免責は、誰よりも破産者にメリットがある制度です。
そして、免責のための手続きの多くを行うのが破産管財人です。
この破産管財人に協力しない破産者の行為は、破産手続きを妨害するもののため、免責不許可事由に該当します。
財産を隠す
自己破産の手続きには、免責手続きだけでなく、債権者のために財産等を清算する手続き(破産手続き)も含まれます。
財産を隠す行為は、破産手続きを妨げるもののため、免責不許可事由に該当します。
債権者を明かさない
財産を隠す行為と同様に、債権者を明かさないのも、破産手続きを妨げる行為にあたるため、免責不許可事由に該当します。
債権者を平等に扱わない
破産手続きは、債権者間に不公平が生じないよう、公正に清算を行わなければなりません。
そのため、たとえば、一部の債権者にだけ全額返済してしまうなど、不公平を生じるさせる行為は禁止されています。
これを破るのも免責不許可事由に該当します。
7年以内に免責を受けたことがある
一度免責を受けたり、それに匹敵するような強力な法律上の保護を受けたことがある場合には、それが7年以内になされたものである場合は、免責は認められません。
まとめ
自己破産は望めば誰でもできるわけではなく、裁判所に認められる必要があります。
裁判所に自己破産が認められる為の条件は下記の2つです。
- 支払不能の状態である
- 免責不許可事由にあたらない
1つ目の「払不能の状態である」とは、弁済能力の欠乏により、破産者が弁済期の到来した債務を、一般的かつ継続的に弁済することができないと判断される客観的状態であることをいいます。
2つ目は「免責不許可事由にあたらない」必要があります。
ギャンブルによって多額の借金を作ったなど、不誠実な破産者であることを示す事情があるときには、免責許可決定がもらえない(免責が許可されない)ことがあります。このように、免責が許可されなくなってしまう事情のことを「免責不許可事由」といいます。