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中国を選んだインドネシアの高速鉄道、費用が日本案の4割高に

中国を選んだインドネシアの高速鉄道、費用が日本案の4割高に

中国が主導してインドネシアで建設が進む高速鉄道の計画をめぐり、ジョコ大統領は2021年10月6日、国費の投入を可能にする改正大統領令を公布しました。

当初の両政府の合意では、インドネシア政府に財政負担を一切伴わない触れ込みでしたが、事前の事業調査の甘さが露呈して費用が想定を上回り、方針転換を迫られています。


ジョコ政権は政府融資も選択肢に入れています。

インドネシア国鉄社長は9月上旬、国会の証言で「高速鉄道事業が19億ドル(約2100億円)のコスト超過に陥っている」と表明し、政府に財政支援を求めていました。


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インドネシアと中国が合意した高速鉄道の建設

インドネシアと中国が合意した高速鉄道の建設

インドネシアと中国両政府は2015年9月に高速鉄道の建設で合意しました。

首都ジャカルタと西ジャワ州の中心都市バンドン間の140キロメートルを中国の高速鉄道技術で結び、現行の在来線で3時間半の所要時間を45分に短縮する計画です。


55億ドルから79億7000万ドルに増加

55億ドルから79億7000万ドルに増加

インドネシア政府は当初、総工費を55億ドルと見積もっていました。

起工式から5年を迎えた今年1月時点では60億7000万ドルに膨らむと見込んでいます。

その後、国鉄も資本参加する事業主体のインドネシア中国高速鉄道社(KCIC)が改めて費用を精査した結果、少なく見積もっても79億7000万ドルに達するとわかりました。


国鉄は国会証言で、土地取得や建設にかかる費用が想定を上回ったほか、計画の再三の遅延により、見込んでいた収入を得られなくなったことを追加費用発生の理由に挙げました。

財務や税務などのコンサルタント料もかさんだようです。


KCICは当初、16年中に建設予定地の土地収用を終える方針でしたが。

しかし、当局が保有する土地データが実際と異なる例があり、所有者の把握が難航しました。

すべてを把握した結果、建設に必要な土地面積は予定より3割広いことが分かり、コストをかさ上げしました。


 

追加の費用負担の多くを中国が負担

追加の費用負担の多くを中国が負担

追加の費用負担を巡っても問題が生じています。

全体の負担の枠組みは、75%を中国国家開発銀行(CDB)の融資、25%をKCICの資金から充てる取り決めになっています。


KCICは資本の60%をインドネシア、40%を中国の企業で構成する共同事業体です。

ただインドネシア側がKCICの資本金を十分に支払っていないことが判明し、中国側は追加費用の捻出に向けたCDBの追加融資や中国企業の負担を拒否しています。


日本ではなく中国を選んだインドネシア

日本ではなく中国を選んだインドネシア

高速鉄道計画をめぐっては、当初、日本の政府開発援助(ODA)を通じた新幹線方式の提案が有力視されていました。

日本案では総工費を6000億円と見積もり、うち4500億円を償還期間40年、金利0・1%の円借款で充てる内容でした。

日本企業が受注する条件付きだったとはいえ、1%以上する通常のODA案件の金利より低く抑えていたのです。


しかし、ジョコ氏は最終的に中国案の採用を決めました。

インドネシア政府に財政負担や債務保証を一切求めず、技術も移転するという破格の条件が決め手となったようです。


日本案は着工までに時間がかかる

日本政府関係者は「日本のODAでは追加費用の発生を避けるため綿密に事前調査してコストを見積もる」と話します。

円借款の最終決定に際しては相手国政府が提出する土地収用計画も精査します。

インドネシアにとっては、日本案では着工までに時間がかかる可能性があり、18年の完工をうたった中国案はスケジュール的にも魅力的だったのです。


中国を選択したインドネシアは、安物買いの銭失い

中国を選択したインドネシアは、安物買いの銭失い

高速鉄道の工事の進捗率は現在79%にとどまり、開業は22年末までずれこむ見通しです。

完工は日本案で想定した21年よりも遅れるうえ、総工費も4割以上高い水準に膨らんでいます。


触れ込みに反してインドネシア政府が国費を投入する方向となり、中国案のメリットは薄らいでいます。

まさに、「安物買いの銭失い」と言えるでしょう。


東南アジアのインフラ開発協力は日米VS中国の構図

東南アジアのインフラ開発協力は日米VS中国の構図

東南アジアは中国と日米が影響力の拡大に向け、インフラ開発協力を競う主戦場になっています。

中国の開発援助は新興国の汚職を助長しているとの批判も根強く、日本は事業の持続可能性を重視したODAの質の高さや透明性をアピールしていますが、苦戦を強いられています。

インドネシアの状況を次の受注競争にいかす知恵が求められます。



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