ＮＩＳＡ恒久化を明言！日米欧の投資を促す税制優遇の違い

政府は２０２２年１１月２５日、資産所得倍増プランの案を公表しました。

少額投資非課税制度（ＮＩＳＡ）は非課税期間を無期限にして今後５年間でＮＩＳＡ口座数と投資額の倍増を目指します。

家計に眠る預貯金１０００兆円の一部を誘導する狙いです。


過去に何度も叫ばれてきた「貯蓄から投資」の起爆剤とするには、シンプルな制度設計や非課税枠の拡大が焦点になります。


詳しく解説していきます。

動画でも解説しています

岸田文雄首相、ＮＩＳＡ恒久化を明言

岸田文雄首相は２０２２年１１月２５日、新しい資本主義実現会議の分科会で「一般ＮＩＳＡとつみたてＮＩＳＡの双方の恒久化を実施する。金融商品から得た利益が非課税となる期間を無期限化する」と表明しました。

これによって「中間層を中心とする層が将来にわたって安定的に資産形成を行う環境を整備する」と述べました。


資産所得倍増プランの案について、日本証券業協会の森田敏夫会長は「我々が提案してきた内容と方向性が合致する。高く評価したい」とコメントしています。


現状のＮＩＳＡは非課税期間が決まっていて「長い目線の投資を促していくのにそぐわない」という声が多かったです。

これから資産を積み上げていく現役世代を取り込むための舞台が遅ればせながら整うことになります。

非課税期間を無制限にして非課税枠を増やす

ＮＩＳＡは株や投資信託を買う「一般ＮＩＳＡ」と、投信を毎月積み立てる「つみたてＮＩＳＡ」があります。

一般は２０２３年、つみたては４２年までの時限措置で、一般ＮＩＳＡは２４年に新制度への移行が決まっていました。

新制度は２階建ての設計で、１階部分は積み立てに限るなど制度が複雑だという批判が多かったです。


今回の案では２階建てにする新制度をとりやめ、既存の一般ＮＩＳＡとつみたてＮＩＳＡの非課税期間を無制限にして非課税枠をそれぞれ増やすとしています。

一般ＮＩＳＡの非課税期間は５年、つみたては２０年でした。

４０万円の非課税枠の上限を３倍以上にする必要がある

プラン案では非課税枠の拡大について具体的な数値に触れられていません。

大和総研の是枝俊悟主任研究員は、中間層の資産所得を倍増するには「つみたてＮＩＳＡなら４０万円の年間非課税枠の上限を３倍以上にする必要がある」と指摘しています。

日米欧の投資を促す税制優遇の違い

ＮＩＳＡ拡充の背景にあるのが、有価証券の配当収入などからなる資産所得の低さです。

ニッセイ基礎研究所によると、日本の１人あたりの資産所得（１９年）は１８００ドル（約２５万円）とユーロ圏の２６００ドルを下回り、７９００ドルの米国の４分の１です。

可処分所得に占める資産所得の割合は日本が７．９％で、米国（１６．５％）などに水をあけられています。


米欧日では、投資を促す税制優遇の違いが大きいです。

米国は家計資産１１８兆ドル（２１年）のうち退職金などを積み立てる「個人退職勘定（ＩＲＡ）」や教育資金積み立ての「５２９プラン」など税制優遇制度を通して保有する資産が２割もあります。

英国もＮＩＳＡの手本になった「ＩＳＡ」など税制優遇の資産は２割を占めています。

一方、日本はＮＩＳＡに企業型確定拠出年金（ＤＣ）などを加えても税制優遇の対象は２％ほどです。

ＮＩＳＡの口座を活用している人は人口の約１割

ＮＩＳＡ拡充で税制優遇の幅を広げ、資産所得倍増につなげたい考えですが課題は多いです。

現行のＮＩＳＡの口座数は１７００万ですが稼働率は７割ほどです。

実際に投資しているのは約１２００万口座と日本の人口の約１割にとどまっています。


日本証券業協会がＮＩＳＡ口座を開設しない人に理由を聞いたところ「投資する気がない」「制度が複雑」という声が多かったです。

ＮＩＳＡ制度のシンプルな設計や金融教育を通した投資への理解促進は欠かせません。

日本の投資環境の課題

ＮＩＳＡを経由する投資マネーが米国を中心とした海外株に集中している課題もあります。

マネックス証券では１０月、米国株に関連する投信が（つみたてＮＩＳＡの）積み立て投資の６割を占めています。


日本株が魅力ある投資先として個人マネーをひき付けていくには税制優遇だけでは物足りません。

企業収益の向上に加え、最低投資金額が数百万円とＮＩＳＡの年間投資上限額を超えるような株価にある企業に対して、株式分割などで個人が投資をしやすいように訴えていく必要もあります。

まとめ

岸田文雄首相は２０２２年１１月２５日、新しい資本主義実現会議の分科会で「一般ＮＩＳＡとつみたてＮＩＳＡの双方の恒久化を実施する。金融商品から得た利益が非課税となる期間を無期限化する」と表明しました。

プラン案では非課税枠の拡大について具体的な数値に触れられていません。


米欧日では、投資を促す税制優遇の違いが大きいです。

米国は家計資産１１８兆ドル（２１年）のうち退職金などを積み立てる「個人退職勘定（ＩＲＡ）」や教育資金積み立ての「５２９プラン」など税制優遇制度を通して保有する資産が２割もあります。

英国もＮＩＳＡの手本になった「ＩＳＡ」など税制優遇の資産は２割を占めています。

一方、日本はＮＩＳＡに企業型確定拠出年金（ＤＣ）などを加えても税制優遇の対象は２％ほどです。