ドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社がそれぞれ「(販売店に)端末販売価格を自由に設定できる旨を周知する」などと発表し、販売店による端末価格の自由な値付けを妨げないと表明しました。
代理店の販売価格を拘束しているとして、公正取引委員会の指導を受けたことに対応した格好です。
仕組み上は代理店が値下げしやすくなるりますが、端末販売は利幅が薄く、米アップルの「iPhone」など人気スマホの店頭価格を下げるのは難しそうです。
公正取引委員会はかねてより問題視
公取委は携帯通信大手が販売店に対し、実質的に価格介入してきたことを問題視してきた過去があります。
オンラインで消費者に直販している価格と同じ卸値で販売店にスマホを売り、その卸値で店頭で売るように要請するなどしてきたといいます。
オンラインと店頭で価格差が生じないようにするためです。
iPhoneの価格は下がりにくい
今回、ドコモは自社オンラインの直販価格より安い値段で販売店に卸すと発表しました。
KDDIとソフトバンクも追随する可能性があり、消費者は今までより安い価格で端末を買える余地が出てきます。
しかし、米アップルの「iPhone」など人気端末の価格が下がるかは不透明です。
理由は、そもそも端末販売の利幅が小さいためです。
アップルなどのメーカーは端末の希望小売価格を決め、この価格に沿った値段で携帯通信大手に卸しています。
携帯通信大手はこれに利幅を乗せた価格で自らオンラインで売ったり、販売店に卸したりしているとされます。
販売店の利幅は価格10万円超の高額機種でも「1000~2000円程度」です。
今後、携帯通信大手から販売代理店への卸値が下がっても、販売店が大幅に値下げするのは難しい構造なのです。
また新型iPhoneなどは店頭での人気も高いため、代理店からすれば、積極的に値下げに踏み切る理由はありません。
携帯業界の価格競争が促進される
公取委が今回、携帯通信大手と販売店の商習慣にメスを入れたのは、携帯業界の競争を促進させるためです。
公取委の菅久修一事務総長は13日の記者会見で、携帯通信3社の取り組みについて「評価できる」と話しました。
携帯端末の店頭価格が今後下がる可能性については「事業者間の競争がきちんと行われる環境を整備する。環境整備を進めて、実質的な意味で消費者にとってお手ごろな価格になることを期待している」と述べるにとどめました。
顧客の囲い込みがなくなる
携帯通信3社は今回、端末価格関連とは別に、公取委が改善を求めていた点についても現状の進捗を公表しました。
KDDIとソフトバンクは、高額な大容量プランの契約獲得を優遇する代理店向けの評価制度を撤廃したと発表しました。
有利な残価で利用済み端末を引き取る端末購入サポートプログラムは、新機種への買い替えが条件でしたが、これを撤廃しました。
いずれも、顧客の囲い込みにつながり、事業者間の競争を阻害していると公取委から判断されていたのです。
携帯電話業界の近年の動き
ここ数年、携帯通信の料金値下げを要請し、市場の競争を促す政権の一連の政策により、通信会社が敷いてきた制度の多くが変わりました。
公取委の指導以外でも総務省などが競争環境の整備に動き、消費者が他社の料金プランへ乗り換える際の手数料は撤廃されました。
携帯料金の引き下げも進みましたが、現状、消費者のプラン乗り換えなどの動きは途上です。
大手3社が今春から始めたオンライン契約専用の割安プランの契約数は7月時点で330万件程度と全体の契約数の2%程度にとどまります。
まとめ
ドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社がそれぞれ「(販売店に)端末販売価格を自由に設定できる旨を周知する」などと発表し、販売店による端末価格の自由な値付けを妨げないと表明しました。
公取委は携帯通信大手が販売店に対し、実質的に価格介入してきたことを問題視してきた過去があります。
公取委が今回、携帯通信大手と販売店の商習慣にメスを入れたのは、携帯業界の競争を促進させるためです。