借金の整理(債務整理)には下記の4つの方法があります。
- 任意整理
- 特定調停
- 個人再生
- 自己破産
それぞれにメリット・デメリットがあるため、自身に合った債務整理を選択する必要があります。
この記事を読めば、どの債務整理を選べばよいのか判断するための要素を知ることができます。
任意整理 or 自己破産・個人再生の判断
任意整理を選択するか、自己破産や個人再生を選択するかを検討するときは、「支払不能」かどうかという点が判断するときの基準となります。
要するに、毎月の収入と返済額を考えて、長期にわたって支払いを続けることができるかどうかということを考えなければなりません。
自己破産の場合、法律上は債務者が支払不能にあるときは、申立てにより裁判所が破産手続きを開始すると規定しています(破産法15条1項)。
つまり、自己破産を選択するためには支払不能であることが必要というわけです。
なお、個人再生も債務者に破産手続き開始の原因となる事実の生じるおそれがあるときは、再生手続き開始の申立てをすることができると規定されており(民事再生法21条1項)、要件はほぼ同じです。
破産法では、支払不能とは「債務者が、支払い能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいう」と規定されています(破産法2条11項)。
このように、法律の規定ではわかりにくいですが、一般的には、毎月の支払額の合計が手取り収入から住居費を差し引いた額の3分の1を超えていると支払い不能であるといわれていますので、この基準が参考になります。
ただ、支払い不能であるかどうかは、債務者の資産、年齢、性別、職業、収入などから総合的に判断されますので、必ずしもこの基準が当てはまるわけではありません。
任意整理の場合、任意整理後に各金融業者に支払う毎月の返済額は任意整理前よりも大幅に減る可能性があります。
そのため、弁護士の判断基準としては、任意整理を行った場合に必要になると見込まれる金額を検討し、それでも毎月の支払いがむずかしい場合に、任意整理をあきらめて自己破産(または個人再生)を検討することになります。
自己破産 or 個人再生の判断
自己破産であれば、債務はすべて免責されて支払う必要がなくなります。
一方で個人再生の場合は、総債務額や資産の金額によって決定する支払額(たとえば、総債務額が100万円~500万円の場合は100万円)を3年間から5年かけて支払う必要があります。
両方とも、裁判所を通す厳格な手続きで、支払い不能に陥っていることが手続き開始の要件になります。
したがって、多くの方にとって自己破産と個人再生のちがいは、「借金を全部支払わなくていい」か「減額されるものの一部を支払う必要がある」という点くらいしかないように思えてしまいます。
そのため、単純にすべての支払が免除される自己破産を選択したほうが有利といえます。
しかし、下記のように自己破産をすると支障がある方や、自己破産で債務の免除が認められない方は、個人再生を検討することになります。
個人再生を検討するケース
自己破産ではなく個人再生を検討したいケースには、主に下記の3つがあります。
- 住宅ローンを返済中の場合
- 自己破産をすると職業制限や資格制限がある場合
- 免責が認められない可能性がある場合
それぞれわかりやすく解説していきます。
1.住宅ローンを返済中の場合
自己破産手続きが開始されると、資産も清算されてしまいます。そのため、住宅を失うことになります。
一方、個人再生では、住宅ローンを支払中の場合、住宅ローン特別条項をつけることができ、住宅を残すことができます。
自己破産や個人再生の場合、原則として、すべての債権者を平等に扱う必要があり、(つまり、どこにも支払ってはいけないということ)、すべての債権者に対する支払いを止めなければなりません。
しかし、住宅ローン特別条項付きの個人再生の場合は、住宅ローンだけは支払いを止めずに返済することができます。
そした、裁判所で個人再生手続きが開始されたあとも、住宅ローンだけは他の債務者と区別されて、通常どおりに支払うことができます。
そのため、住宅ローン特別条項付きの個人再生であれば、住宅を清算されることはなく、住宅を残すことができます。
このように、住宅ローンを返済中でその住宅を残したい方は、自己破産ではなく個人再生を検討することになります。
2.自己破産をすると職業制限や資格制限がある場合
自己破産の場合、手続き期間中に限り、職業制限や資格制限があります。
このような職種に従事している方は、仕事への影響を避けるために自己破産ではなく個人再生を選択するケースが多くなります。
3.免責が認められない可能性がある場合
破産手続きの場合、免責不許可事由がある場合には、原則として免責を受けられないと破産法に規定されています。
もっとも、「裁量免責」といって、裁判官の裁量で免責を受けられる規定もあります。実際には、免責不許可事由がある方の多くが裁量によって免責を受けています。
しかし、免責不許可事由がある場合には、必ずしも自己破産手続きで免責を受けられるわけではないので、個人再生を選択したほうがよいケースもあります。
自己破産は最終手段
自己破産手続きは、すべての債務を免除され、支払う必要がなくなります。そのため、債務者にとっては一番メリットが大きい手続きです。
しかし、弁護士の立場からは、債務整理の相談を受けた場合、自己破産は最終手段として考えます。
つまり、債務整理の方法を検討する順番としては、まず「任意整理ができないか」を検討します。
任意整理によって、金融業者に将来利息や延滞損害金を免除してもらい、月々の返済額も減らしてもらうことで、支払いを継続できないかと考えます。
任意整理の場合、各金融業者に分割回数の上限のようなものがあります(60回払いが限度という金融業者が多いです)。
交渉次第で分割回数を増やしてくれることもありますが、基本的には債務額をその分割回数で割って、毎月の支払額をシミュレーションします。
その結果、算出した毎月の返済額を相談者が支払うことが困難である場合、個人再生や自己破産を検討します。
個人再生の場合、住宅ローン特別条項を使って住宅を残せる可能性があり、職業制限等もないので、任意整理が難しい場合には、まず個人再生が可能か否かを検討します。
資産がなく、自己破産による職業制限の影響を受けない方については、個人再生を考えずに自己破産を検討します。
しかし、自己破産によるデメリットからなるべく自己破産を避けたほうがいい方に対しては、先に個人再生を検討して、それでも難しい場合に自己破産を検討することになります。
このような流れで検討するので、自己破産は最終手段になるわけです。
もちろん、状況に応じてさまざまですので、必ずこのように債務整理の方法を検討する必要はありません。
最初から「自己破産したい」といって弁護士に相談する方もいますので、あくまでも一つの考え方として捉えてください。
まとめ
債務整理には下記の4つの方法があります。
- 任意整理
- 特定調停
- 個人再生
- 自己破産
整理方法を検討する際に考えるポイントはいくつかありますが、上記はデメリットの小さい順番ともいえますので、この順番で借金整理を検討することをお勧めします。
債務整理を選択するときに、第一に考えるべきポイントは「支払不能」かどうかです。
支払がが可能か不能かの判断基準ですが、一般的には、毎月の支払額の合計額が手取り収入から住居費を差し引い額の3分の1を超えていると支払不能であるといわれています。
支払可能で検討したい債務整理
- 任意整理
- 特定調停
支払不可で検討したい債務整理
- 個人再生
- 自己破産
自己破産ではなく、個人再生を検討するケースは①住宅ローンを返済中の場合、②自己破産をすると職業制限や資格制限がある場合、③免責が認められない可能性がある場合です。
個人再生の場合、住宅ローン特別条項を使って住宅を残せる可能性があり、職業制限等もないので、任意整理が難しい場合には、まず個人再生が可能か否かを検討します。
資産がなく、自己破産による職業制限の影響を受けない方については、個人再生を考えずに自己破産を検討します。
しかし、自己破産によるデメリットからなるべく自己破産を避けたほうがいい方に対しては、先に個人再生を検討して、それでも難しい場合に自己破産を検討することになります。