個人再生は債務整理一つです。手続きは素人には難しく、弁護士や司法書士に依頼するのが一般的です。
そのため、当然、費用が発生します。かかる費用は弁護士と司法書士によっても大きく異なります。
この記事を読めば、個人再生に「かかる費用の相場」と「手続きの流れ」を知ることができます。
個人再生にかかる費用の相場
弁護士等にかかる費用の相場
個人再生手続きは、弁護士等の専門家に依頼したうえで申し立てるのが必須であるといえます。
実際に、名古屋地方裁判所のホームページにも、「一般的に、弁護士に依頼をせずに、本人が日常の仕事に従事しながら、個人再生の申立手続きを遂行していくことは、実際には相当難しいと思われます」との記載があります。
弁護士等の専門家に個人再生手続きを依頼する場合の費用は、事務所によって大きく異なりますが、司法書士に依頼する場合で、大体20万~30万円、弁護士に依頼する場合で30万~50万円です。
このように弁護士と司法書士で費用が違うのは、司法書士は個人再生手続きにおいて必要な書類の作成のみを行い、裁判所とのやり取りはすべて本人が行う必要がある一方で、弁護士であれば、裁判所とのやり取りも含めて弁護士が行うことができるという点に理由があります。
とにかく安く済ませたいのであれば、司法書士に依頼し、金銭的な負担は増えても全部お任せしたい場合には、弁護士に依頼するのがいいでしょう。
手続きにかかる費用の相場
- 申立手数料(貼付印紙額):10,000円
- 予納金
・裁判所予納金11,928円(官報広告費用)
・分割予納金(個人再生委員にリハーサルとして毎月振り込むもの) - 郵便切手1,600円(120円切手2枚、82円切手10枚、20円切手20枚、10円切手13枚、1円切手10枚)
個人再生の手続きの流れ
個人再生の手続きの流れは、下記のとおりです。
1.申立て
⇩
2.個人再生委員の選任
⇩
3.再生手続開始決定
⇩
4.個人再生委員との面談
⇩
5.再生計画案の提出
⇩
6.再生計画案の認可(不認可)決定
⇩
7.再生計画どおりの返済の開始
それぞれわかりやすく解説していきます。
1.申立て
まず、個人再生手続きの利用を希望する旨を、管轄する裁判所に申し立てる必要があります。
後述しますが、住宅ローンが残っている持ち家を手放さずに個人再生をしたい場合には、別途その手続きを求める申立ても同時に行います。
申立ては、基本的に自分の住所地を管轄する裁判所で行いますが、管轄がどこなのかは裁判所のホームページを見ればわかりますし、当然、弁護士等は把握しています。
申立ての際には、後述する書類の準備が必要です。
特に「債権者一覧表」や「財産目録」などの作成には相当な労力がかかりますし、不備があれば手続き全体に影響をおよぼしますので、注意が必要です。
なお、弁護士等に相談する場合には、下記のことを必ず聞かれることになるので、大まかにでも把握したうえで相談するとスムーズです。
弁護士等に相談する前に把握しておきたいこと
- 借金の借入先(債権者)の名前(消費者金融、銀行、個人など)
- 各借入先から借り入れている額、最初に借入れた時期、毎月の返済額
- 各借入先に担保(抵当権、連帯保証人など)が設定されているかどうか
- 自分名義の資産(土地・建物などの不動産、自動車、株、預金、退職金、生命保険の解約返戻金等)の有無および価値
- 自分および同居している家族の収入と支出のバランス
- 無理なく借金の返済に充てられる金額の目安
2.個人再生委員の選任
裁判所によってさまざまですが、個人再生手続きの申立てが受理されると「個人再生委員」が選任されることがあります(申立てを代理する弁護士がいる場合、選任されないことも多いです)。
なお、東京地方裁判所においては、申立代理人の有無にかかわらず、全件に個人再生委員が選任されます。
個人再生委員は、裁判所が選任する弁護士で、個人再生手続きを申し立てた者(申立人)の財産および収入の状況を調査し、申立人が作成する「再生計画案」について、必要な指摘・アドバイスを行います。
再生計画案とは、「ルールに従って減額した借金の総額を36回(例外的に60回)分割して、毎月支払います」といった内容のもので、個人再生手続きの全体像が書かれたものです。
個人再生委員は、申立人の負債や所有している資産について調査し、申立人がそろえた資料について不備があれば補充を要求したり、資産について現地調査をしたりして、個人再生手続きが適切に進行するように調査を行い、「再生手続開始決定」を出すか否かについて、裁判所に意見書を出します。
裁判所は、個人再生委員の意見を参考に、「手続きを開始するかどうか」、また「借金をどのように減額するか」などを決定していきます。
3.再生手続開始決定
申立てを受け、書類に不備がないことを確認した裁判所は、個人再生委員が選任されていればその意見を聞いたうえで、また、選任されていなければ、申立人から直接事情を聞いたうえで(審尋)、再生手続き開始決定を出します(裁判所によっては、審尋がなされないこともあります)。
これによって、個人再生手続きが終了するまでの間、すべての債権者に対する返済は禁止され、逆に、債権者から申立人に対して取立行為(裁判手続きを含む)をすることも禁じられます。
また、申立人は裁判所の許可なく財産を処分することも禁じられます。
再生手続開始決定後、申立人は個人再生委員に対し、申立書に記載した月の返済予定額を支払うことになります(多くの場合、6ヶ月間)
これは、個人再生手続によって減額された返済額を、毎月支払い続けることができるのかというリハーサルですので、遅れずに支払うことが必要です。
このリハーサルにおいて支払いが滞ってしまうことになれば、「個人再生手続において借金を減額したとしても、支払い続けることが不可能である」と判断され、手続きそのものが廃止されてしまうこともあり得ます。
なお、このリハーサルによって個人再生委員に支払われた額の一部は、個人再生委員の報酬となります(つまり、個人再生委員が選任されると、その報酬は申立人支払わなければなりませんが、申立時に、前もって報酬額のすべてを裁判所に納めなければならないわけではない、ということです)。
4.個人再生委員との面談
再生手続開始決定が出されると、申立人は、個人再生委員と面談をします。
面談の際には、申立時に提出した書類をもとに、個人再生委員から申立人(債務者)と申立代理人(弁護士)に対して、色々な質問がなされ、追加の資料の提出を求められることもあります。
その場合には、申立人と申立代理人が協力して、個人再生委員から出された課題に対応するのと並行して、3.の毎月の返済予定額を個人再生委員が指定する口座に毎月入金しなければならないので、遅れないように注意する必要があります。
5.再生計画案の提出
個人再生委員による債権・財産等の調査が終了すると、いよいよ「再生計画案」の提出となります。
この再生計画案には減額した返済額が記載されます。
6.再生計画案の認可(不認可)決定
提出された再生計画案について、小規模個人再生手続であれば「債権者の議決」が、給与所得者等再生手続であれば「債権者への意見聴取」がなされ、問題がなければ、再生計画案が認可されます。
認可されてからおよそ1か月後に再生計画案は確定し、これにより、法的に借金が減額されたということになります。
なお、不認可となった場合には、「不服申立て」という手段をとり、それでも不認可の結論がくつがえらない場合には、再度の給与所得者等再生手続の申立て(小規模個人再生手続において、債権者の反対によって不認可となった場合)や、自己破産手続・任意整理等、他の手段の検討が必要になります。
7.再生計画どおりの返済の開始
再生計画案の確定により減額された借金を、毎月(場合によっては3ヶ月に1回)返済していき、返済が終了となれば、晴れて借金の残額が免除されます。
個人再生の手続きに必要な書類
東京地方裁判所における、個人再生手続の提出書類は下記のとおりです。
申立時に提出する書類
- 申立書
➝申立人の住所・氏名・生年月日等の情報のほか、小規模個人再生手続と給与所得者等再生手続のどちらを選択するか等の事項を記載します。 - 収入一覧および主要財産一覧(陳述書・財産目録等)
➝陳述書には、現在の職業・収入、過去の職歴、家族の状況・同居の有無、個人再生手続の申立てをするに至った事情などを記載します。
財産目録には、預金・貯金、財形貯蓄等の積立金、保険、有価証券(株券等)、自動車、不動産(土地・建物)等の自己名義の財産の有無および財産としての価値などを記載します。 - 債権者一覧
➝借入先のすべてと、借入額・借入原因を記載します。住宅ローンがあれば、別途、借入額等を記載します。 - 委任状
- 住民票
申立時、またはその後速やかに提出する書類
小規模個人再生手続の場合
- 確定申告書、源泉徴収票その他の収入額を明らかにする書面
- 個人再生委員が指示する書面
給与所得者等再生手続の場合
- 源泉徴収票または課税証明書(直近1年分)
- 給与明細書(2ヶ月分)
- 個人再生委員が指示する書面
申立後速やかに提出する書類
- 再生債務者代理人あて封筒3通
- 再生債権者あて封筒1組