実際に住宅を購入しようとなると、多くの場合は不動産業者と交渉を進めていくことになります。
しかし、多くの人にとって不動産の購入は初めての経験です。
そのため、想定外の情報を与えられ、当初思い描いていた通りに事が運ばないことが多々あります。
住宅ローンを利用する前に知っておくべき情報を得ておくことで、スムーズに交渉を進めることができます。
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住宅ローンの事前審査で調べられる内容
住宅ローンを借りるためには、審査に通る必要があります。
審査は「事前審査(仮審査)」と「本審査(正式審査)」の2回行われ、本審査が住宅ローンの正式な申し込みとなります。
審査の際には個人信用情報が見られてしまいます。
申込みにあたっては、審査で認証されやすい環境をつくっておくことが重要です。
住宅ローンを利用する場合は、金融機関の店舗やインターネットを通じて「事前審査」の申込みを行います。
これを受けた、金融機関(もしくは保証会社)は住宅ローンを申し込んだ人に関する一定の個人情報をチェックすることになります。
銀行の場合、全国銀行個人信用情報センターが下表のような個人信用情報を管理しており、審査の際にはこれ等の情報が照会されます。
情報の種類 | 内容 | 登録機関 |
取引情報 | ローン、クレジットカード、保証等の契約内容や返済情報 | 契約期間中、および完了区分発生日から5年を超えない間 |
返済履歴情報 | 残高情報と入金区分の履歴 | 直近の2年間 |
官報情報 | 個人の破産・民事再生などの官報掲載情報 | 破産等の手続き開始決定日から、10年を超えない期間 |
本人申告情報 | 本人確認資料の紛失・盗難、同姓同名の別人が登録されている旨の本人からの申し立て | 申告から5年を超えない期間 |
照会登録情報 | 会員(金融機関等)から照会があったことを記す記録 | 照会日から1年を超えない期間。ただし、会員への回答は新規与信判断の照会では6ヶ月を超えない期間 |
一般的な個人信用情報では、「取扱情報」と「返済履歴情報」が特に重要で、現在借りている各種融資の契約内容や返済状況などはここで確認できます。
また、「照会記録情報」は金融機関が個人情報にアクセスした記録です。
直近で照会した記録が登録されている場合は、他の金機関でも住宅ローンを申し込んだ可能性が高いため、審査を急いでくれるかもしれません。
一方で、借り換えにあたり以前の照会記録情報があると、そこで承認されなかった可能性があると判断され、審査が慎重になるかもしれません。
ローン条項とは
住宅ローンの事前審査で、「仮に自身がこれくらいの物件を購入する場合は、融資してもらえるか?」といった内容の申込みができればよいのですが、このような審査は受け付けてもらえません。
ローン相談会などに参加して、「おそらく大丈夫だろう」と言われたとしても、実際の申込みと審査は具体的な物件が決まった後で行われ、そこで融資の可否が決定します。
希望するローンが借りられるかは、契約の時点ではまだわかりません。
このようなリスクに備えて、マイホームを取得する際には、売買契約書や請求書に「ローン条項」(ローン利用特約等)がついている(つける)のが一般的です。
これは、定められた期限内に住宅ローンの融資承認が下りなかった場合には契約が解除され、手付金が戻るという特約です。
基本的には、「〇〇銀行の▢▢支店」、「△△銀行の☆☆ローンセンター」といったように、1つないし複数の住宅ローンを申し込む金融機関などが、売買契約書等に明示されています(万が一、あいまいな表現となっている場合は注意が必要です)
指定されている金融機関は、不動産会社のメーンバンクや提携ローン契約を結んでいるところが通常でしょう。
ローン条項に関する注意点
本来、ローン条項は購入予定者を守る制度です。
しかし、どんなに不利な融資条件でも、審査に通ればこれを借りて購入するか、手付金を放棄して契約を解除するしかないという側面も持っています。
住宅ローンの具体的な金利タイプなどもローン条項で指定できれば安心ですが、通常は契約の際に書類が作成されていて、ローンの申し込み先などが書かれています。
事前の交渉で指定できるかは状況次第となります。
何よりも、ローン条項の適用による契約解除の期限まで、時間は限られています。
物件の種別や、売り主(あるいは仲介する不動産業者)の意向などによっても異なりますが、一般的には2週間~1ヶ月程度です。
事情があって期日に間に合わない場合などでは、売主・買主の合意により、覚書などを取り交わすことで、期日を延長することも可能です。
一方で、有利な住宅ローンが借りられないと分かり、ローンの申し込みを怠った場合などでは、契約が解除されて手付金が返ってこない危険性があります。
住宅ローンを借りる際に「提携ローン」の利用が多いのは、審査の基準が通常より緩やかなケースも多いことに加え、不動産業者が手続きを代行することにより、審査が円滑に進むという点も影響しています。
いずれにしても、売買契約書を交わしてからどの金融機関で借りるかを慌てて考えるのは避けるべきです。
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「借入限度額」についてわかりやすく解説
住宅ローンの借入金額には、下記の2つの観点から上限が設けられています。
- 借入金額の割合
- 融資限度額
それぞれわかりやすく解説しています。
借入金額の割合
1つめは、購入価格や建築代金に対する「借入金額の割合」です。
かつては8割以内が一般的でしたが、現在では、一部の金融機関や商品を除いて10割以内がほとんどです。
保証料や登記関係の費用など、取得時にかかる「諸費用」まで含めて貸し出すところも珍しくありません。
審査の結果次第では、「自己資金ゼロ」でマイホームが取得できるというということです。
とはいえ、「フラット35」では借入金額の割合(=融資率)が9割を超えると全体の金額に対する融資金利が高くなりますので、借入れは9割以内に抑えたいところです。
また、民間住宅ローンでも自己資本金が少ないと審査で評価が低くなります。
大手銀行を中心に融資率が8~9割を超える場合は融資金利や保証料が高くなる金融機関もあります。
「借りられる」のと「借りてもよいか」は、別の話だと理解しておきましょう。
融資限度額
2つめは、住宅ローンとして貸し出す金額自体の上限である「融資限度額」です。
たとえば購入を希望する住宅が6,000万円で、融資率が10割だったとしても、その金融機関での融資限度額自体が5,000万円であれば、希望額をすべて借りることはできません。
昨今では、地方銀行などでも1億円まで貸し出すところが多くなっていますが、地域や商品によっては2,000~5,000万円以内などの設定もあるため、確認しておく必要があります。
商品ごとの融資率と融資限度額の違い
住宅ローンの種類 | 融資率 | 融資限度額 |
民間住宅ローン | 8~10割以内 | 3,000万円~1億円 |
フラット35(買取型) | 10割以内 | 8,000万円 |
財形住宅融資 | 9割以内 | 4,000万円※1 |
フラット35+財形住宅融資 | 合計で10割以内 | 1.2億円※2 |
フラット35+民間住宅ローン | 合計で10割以内 | 8,000万円~※2 |
フラット35(リフォーム一体型 or リノベ) | 「購入価格+リフォーム工事費 | 8,000万円 |
※1:財形貯蓄残高の10倍まで
※2:それぞれの融資限度額を満たす必要がある
「自己資金」と「諸費用」についてわかりやすく解説
マイホームを取得する際には、住宅ローンで借りられる金額以外は自分で準備しなければいけません。
これが「自己資金」です。
自己資金として必要な金額は、「購入価格−住宅ローンの借入金額」から計算される「頭金」と、「諸費用」などから把握できます(後述)。
自己資金が少ないと住宅ローンの借入金額が多くなり、返済額も増えてしまいます。
そうなると審査も厳しくなりますし、金融機関によっては適用金利や保証料の条件が不利になる場合もあります。
したがって、住宅ローンの借入を物件価額等の8割までに抑える、つまり2割以上の頭金を準備する、というのが理想といえます。
ただし、手持ち資金をすべて使ってしまうのは危険です。
いざという時の生活防衛資金や将来的に必要となる教育資金なども考えて、最低限は手元に残しておくことが大切です。
利用するローンによって諸費用は大きく異なる
住宅を取得する際に必要となる諸費用は、取得自体にかかる費用と、住宅ローンの借入れにかかる費用に大別されます(後述)。
このうち、住宅ローン関連の費用は金融機関やローン商品で異なります。
とくに融資事務手数料のタイプや保証料の有無(および水準)によって、諸費用の額は大きく変わります。
ローン関係の諸費用だけをみても借入金額の1~4%程度になるということを理解しておきましょう。
土地・建物の取得にかかる費用
印紙税 | 売買契約書や建築請負契約書を作成するときに収入印紙を貼付して納付する。契約金額等で変わる |
不動産取得税 | 不動産を取得する際に課税される地方税。敷地や床面積が広くなければ非課税となることが多い |
仲介手数料 | 不動産業者を通した取引では、取引価格の3%+6万円を上限とした仲介手数料が必要となる |
登録免許税 | 所有権の保存、移転などの当期を行う際にかかる |
司法書士報酬 | ほとんどの場合、上記の不動産登記は司法書士に依頼する。一般的な物件では、7万円程度が目安 |
- 修繕積立一時金
新築マンションの場合、将来の大規模修繕に備えるために、数十万円(物件価額の1%程度)を納める - 上下水道等負担金
戸建てでは、新規に上下水道を引き込むための負担金が必要となる場合もある(数万~数十万円程度) - その他精算金
固定資産税などを、前の所有者と日割りで折半する
住宅ローンの借入にかかる費用
印紙税 | 住宅ローン(金銭消費貸借)の契約書を作成する際に課税される。借入金額によって税額が決まる |
登録免許税 | ローンを組む場合は、自宅を担保として提供するが、その抵当権の設定登記を行う際にも税金がかかる |
司法書士報酬 | 抵当権の設定登記を依頼したときにかかる。住宅ローン契約が1件の場合、6万円前後が目安 |
融資事務手数料 | 住宅ローンの種類や金融機関等で大きく異なり、一般的には、「3万円~借入金額2.2%」の範囲 |
保証料 | 指定された保証会社から保証を受ける際にかかる費用。数十万円を一括して支払うタイプと、ローン金利に上乗せするタイプに分かれるが、無料のところもある |
機構団体信用 生命保険特約料 |
財形住宅融資(機構直接融資)等を借りる場合に必要 |
火災保険料 地震保険料 |
住宅ローンは借入時には、火災保険への加入が義務付けられている。保険料は地域や住宅の構造、保険会社等で異なり、最長10年分を一括で支払う場合は10~40万円程度が目安。地震保険は義務ではない |
住宅ローンにかかる諸費用の総額
住宅の取得時に掛かる諸費用は、購入価格に対して2%~5%(仲介手数料が必要な場合は、購入価格に対して5%~8%)程度が目安となります。
引越し代や家具の購入費なども合わせると、購入価格の5%~10%程度は準備しておきたいところです。
住宅ローン取得にかかる費用は主に下記のとおりです。
- 印紙税
- 不動産取得税
- 登録免許税
- 登記手数料
- 融資事務手数料
- ローン保証料
- 火災保険料
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