公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の2023年の収益は34兆3077億円のプラスでした。
年間の収益としては過去最高を更新しました。
日本株への寄与は12兆円に達しており、株高の恩恵が年金財政にもたらしました。
今後の焦点は、高い収益を狙うアクティブ運用になりそうです。
詳しく解説していきます。
GPIFの収益、過去最高の34兆円
2月2日にGPIFが発表した2023年10~12月期の運用収益は5兆7287億円のプラスでした。
収益率は2.62%で、うち外国株式が4.91%、国内株式が2.05%でした。
四半期ごとの損益を合計した2023年全体では34兆3077億円のプラスと、年間ベースで最高記録を更新しました。
資産ごとにみると外国株式が14兆2973億円と最も多く、国内株式が12兆8773億円でした。
2022年末に189兆円だった運用資産額は2023年末に224兆円と1年間で2割増えました。
国内外の株価が上昇したことに加え、円安・ドル高による外貨建て資産の評価額も上昇しました。
運用収益の積み上がりは年金財政の安定
GPIFは将来世代のための年金積立金を運用しています。
公的年金給付の財源は、その年の保険料収入と国庫負担で9割程度がまかなわれています。
年金積立金から得られる財源は全体の1割程度で補完的な役割との位置づけですが、運用収益の積み上がりは年金財政の安定につながります。
GPIFは株高や円安による影響を受けやすい資産構成
GPIFは国内債券を中心とした資産配分で年金財政上必要な運用利回りを確保できないとして、2014年に株式の比率を従来の24%から50%まで引き上げました。
2020年に外貨建て株式・債券の比率を4割から5割まで拡大するなど、株高や円安による影響を受けやすい資産構成となっています。
GPIFが保有する国内株式の9割以上がインデックス運用
GPIFが保有する国内株式は2023年末時点で約55兆円です。
9割以上がTOPIXなど指数に連動する「インデックス運用」となっています。
上場投資信託(ETF)を保有する日銀に次ぐ日本で2番目に大きい株主とみられています。
指数連動は運用コストを抑えられる利点があります。
一方、日本の上場企業の「二大大株主」が、上場銘柄を丸ごと買う指数連動運用に依存していることで、市場の選別機能が損なわれているとの指摘もあります。
今後の焦点は、高い収益を狙うアクティブ運用
近年は市場全体の底上げを狙い、運用を委託する運用会社を通じて投資先企業との対話に力を入れています。
2022年は時価総額ベースで9割以上の企業と対話し、気候変動や企業統治などの課題に対し改善を促しています。
採用している指数の算出会社に対しても対話を行い、収益向上に向けた指数の改善にも取り組んでいます。
今後の焦点は、投資先企業の選別で高い収益を狙う「アクティブ運用」の強化です。
競争力が高い優良企業を発掘するファンドに資金を供給することで、企業のさらなる成長を促すのも、公的年金など資産を保有する機関投資家(アセットオーナー)の役割です。
政府は「資産運用立国」の実現に向けてアセットオーナーの機能強化を掲げています。
GPIFは2023年12月、委託先の運用会社に求める運用資産残高などの要件を緩和しました。
アクティブ投資を得意とする運用会社の登用が広がれば、日本株ファンドマネジャーの育成と株式市場の活性化につながる可能性があります。