コンサルティングのウイリス・タワーズワトソン(WTW)がまとめた2021年度の最高経営責任者(CEO)報酬調査で、日本の1人あたり報酬額(中央値)が初めて2億円の大台を超えました。
業績連動型報酬の導入が広がり、好業績の企業を中心に報酬額が膨らみました。
ただトップの米国は前年度比2%増の16億円で差はなお大きいです。
詳しく解説していきます。
日本のCEO、報酬2億300万円。アメリカは16億円
日米欧の主要5カ国を対象に、売上高1兆円以上の約500社を対象に調べ、21年の平均為替レートで円換算しました。
日本(集計社数は75社)は2億300万円と前年度比14%増えました。
ドイツは20%増の8億5000万円、英国は11%増の6億9000万円、フランスは35%増の6億1000万円でした。
日本のこれまでの最高額は19年度の1億8800万円。
CEO報酬の内訳をみると、固定で支払われる基本報酬部分は36%と20年度調査から6ポイント低下した一方、1年間の業績に連動する年次インセンティブ部分は7ポイント拡大しました。
日本では業績や株価に応じて報酬額を決める企業が増加
21年度の企業業績は新型コロナウイルス禍の落ち込みから急回復し、東証プライム上場企業の22年3月期純利益は4年ぶりに最高益を更新しました。
日本では企業統治改革を機に業績や株価に応じて報酬額を決める企業が増えており、好業績が重なったことで報酬への反映が大きくなりました。
例えば22年3月期に営業利益が過去最高だったソニーグループは、吉田憲一郎会長兼社長の報酬が50%増の18億8000万円で、うち9割は業績連動報酬や株式報酬でした。
WTWは「日本企業が実施してきた業績連動報酬の引き上げが実効的に働き、ペイ・フォー・パフォーマンス(成果に応じた報酬)が機能している」とみています。
経営人材の国際的な争奪戦
経営人材の国際的な争奪戦も背景に日本のCEO報酬は増加傾向が続いており、17年度の1億5000万円から5年で3割超増えました。
ただ欧米との差はなお3~8倍と大きいです。
米アップルのティム・クックCEOの21年の報酬は約9870万ドル(21年平均レートで約108億3000万円)、JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOは92億6000万円(同)でした。
欧米との差が大きくなる原因
欧米との差が大きくなっているのは、業績連動報酬の占める比率の違いが主な要因です。
米国は全体の91%、英国は78%を業績連動部分が占めます。
基本報酬で比べると、日本の7400万円に対し、米国でも1億4100万円にとどまります。
稼ぐ力でも欧米企業がリードしている面もあります。
WTWによると、日本企業の自己資本利益率(ROE、中央値)は21年度に9・8%と米国(19・3%)やドイツ(12・1%)に劣後します。
WTWは「欧米との報酬差を詰めるには、財務的パフォーマンスだけでなく、人的資本への投資や企業統治の強化など、多角的な視点で企業価値を高めることが求められる」と指摘しています。
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