中国の広域経済圏構想「一帯一路」に絡み、融資を受けた中低所得国で政府負債として公になっていない「隠れた債務」が3850億ドル(約43兆円)にのぼることが2021年9月29日、米調査機関の調べで分かりました。
対中債務が国内総生産(GDP)の10%を超える国は42カ国にのぼります。
中国が不透明な融資を通じて、急速に影響力を強めている実態が浮き彫りになりました。
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開発援助額はアメリカの倍以上
米民間調査機関のエイドデータ研究所が同日発表した報告書で明らかになりました。
報告書では2000年以降に中国政府や国有企業がアジアやアフリカなどの165カ国で資金を拠出した約1万3000件(総額8430億ドル相当)の事業について、支出額や負債額などを調べています。
報告書によると、中国による途上国向けの開発援助額は13~17年に年平均850億ドルと米国の同370億ドルを大きく上回っています。
習近平(シー・ジンピン)指導部が一帯一路構想を打ち出す前の00~12年は同320億ドルで、米国(340億ドル)と同じ規模でした。
ラオスの対中債務はGDPの64%
対中隠れ債務がGDP比で最も大きかったのはラオスで35%でした。
政府債務と合わせた対中債務は64%に及びます。
中国からの融資はラオスで初の高速道路「中国ラオス高速道路」の整備にも使われています。
20年末に首都ビエンチャンと中部バンビエンをつなぐ約110キロメートルが開通しました。
近年は国有企業や金融機関向けが多い
各国で急速に対中債務が膨らむなか、全容はつかみにくくなっています。
12年までは途上国の政府向け融資が主だったが、近年は国有企業や金融機関向けが7割近くを占めています。
多くの融資では暗黙の政府保証が付いているものとみられるが、政府債務として報告されないため途上国の財政管理を難しくしています。
中国の貸し付けは高金利
報告書は一帯一路で中国が自国に有利な条件を設定している点も指摘しています。
政府開発援助(ODA)以外の貸し付けが中心で、融資の約6割に担保や信用保険、第三者による返済保証を付けています。
日本やドイツなどによる開発融資では金利1・1%、返済期間28年が一般的なのに対し、中国は金利4・2%、返済期間10年未満が主です。
融資の実態はベールに包まれている
エイドデータ研究所は「中国は多くの中低所得国が第一に頼る融資元としての地位を急速に確立したが、融資の実態はベールに包まれている」と指摘しています。
中国が詳しい情報を明かさないため、一帯一路への参加リスクを判断するのが難しくなっていると問題点を挙げています。
もっとも、一帯一路に基づく融資は18年ごろから鈍化しました。
受け入れ国側で債務のワナが意識されたことに加え、「中国自身の経済成長が鈍化してくるなかで、積極的な対外投融資を続けにくくなってきている」(第一生命経済研究所の西浜徹主席エコノミスト)との指摘があります。
途上国の財政状況は新型コロナウイルスの影響で打撃を受けており、中国の融資姿勢次第で一段と悪化しかねません。
資金繰りに窮する国も出始めた
資金繰りに窮し、債務交渉に動く国も出始めました。
ロイター通信によると、アフリカ中部の産油国コンゴ共和国は6月、同国の対中債務24億ドルについて、中国が返済延期に原則として同意したと表明しました。
G7で一帯一路に対抗する枠組みをつくる
主要7カ国(G7)は6月の首脳会議で、一帯一路に対抗して途上国や新興国のインフラ構築を支援する枠組みをつくることで合意しました。
欧州連合(EU)も7月に一帯一路に対抗する支援計画をまとめる方針を決めました。
一帯一路に代わる透明性が高い投資として、新たな選択肢を示せるかが焦点となります。
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