借金・債務整理

貸金業者が借金の取り立てに家族のところへ!返済義務はあるのか?

貸金業者が借金の取り立てに家族のところへ!返済義務はあるのか?

親族に貸金業者から借金をしている者がおり、その返済が滞っています。

すでにブラックリストにも登録されていて、他の業者もお金を貸してくれませんので、自己破産を考えました。


その旨を訪ねてきた貸金業者に伝えると、「それなら、家族に借金の返済を請求する」となって、私のところに貸金業者がやってきました。

実際にあり得る話ですが、この場合、私は親族の借金を返済しなければいけないのでしょうか?





他の家族に返済義務はない

他の家族に支払い義務はない

結論からいえば、親や兄弟、親戚などがつくった借金の返済義務が自身に及ぶことはありません。

もしされたとしても、断ればそれ以上何の問題にもなりません。


ただし、保証人や連帯保証人になっている場合は借金の取り立てが自身に行われることがあります。この場合、主債務者が借金返済をしない場合、保証人という立場にもとづいて借金返済義務を負うことになります。

※たとえば、連帯保証人になっている債務者が自己破産をした場合、その借金の返済義務を負うことになります。


また、相続が発生した場合も返済義務が生じます。

債務者本人が死亡した場合、相続人には借金返済義務が相続されます。ただし、相続放棄の手続きをすることで解決できることがあります。


債務者以外への取り立ては禁止

貸金業法21条(取立行為の規制)1項17号では、「債務者等以外の者に対し、債務者等に代わって債務を弁済することを要求すること」、また同8号では、「債務者等以外の者が債務者等の居所又は連絡先を知らせることその他の債権の取り立てに協力することを拒否している場合において、さらに債権の取り立てに協力することを要求すること」を禁止しています。


つまり、債務者以外の者(家族など)へ請求することや債権の取り立てに協力することを要求することを原則として禁止しています。


業者が支払い義務のない親族などに対して支払請求等をすると2年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金又はこれらが併科されます(貸金業法47条の3、第3号)。

したがって、これは犯罪ですので、警察に相談し、場合によっては告訴してください。また、金融庁(あるいは財務局)、都道府県の貸金業担当係に苦情相談をすることもできます。


また、違法な取立てにより精神的な苦痛を受けた場合には、民法上の不法行為として慰謝料の請求ができる場合もあります。

問題が起きた場合、借金整理も含めて、弁護士会の法律相談センターなどで相談してください。



借金した本人が未成年者の場合

この場合、親が保証人や連帯保証人になっていないかぎり、支払い義務はまったくありません。


そもそも、未成年者が親の同意を得ないで借金をした場合は、親や未成年者は後から借金の契約を取り消すことができます(民法5条2項)。

ただし、このようにあとから取り消されるのを防ぐため、悪質業者は、契約書に親の署名捺印を求め、形式上親の同意を取った形をとりますが、この同意は原則的に無効ですから、やはり取り消すことができます。


クレジットカードのキャッシングの場合は、親の同意を得て契約を結んだ際に親の包括的な同意があったとして、利用限度額の範囲内である場合は、取り消すことはできません。


妻が勝手にした借金で夫の責任は

妻が内緒で夫を保証人にしたときも、夫には支払い責任はありません。

保証契約は、保証人になる人と業者(債務者)の間で締結されるもので、妻が夫に内緒で夫を保証人にした場合、夫と業者の間に保証契約が締結されたわけではないので、夫に保証人としての支払い責任はないのです。


このようなケースでは、日常家事債務の夫婦の連帯責任(民法761条)に基づいて、夫婦はお互いに日常家事行為の代理権限があるので表見代理(民法110条)が成立するのではないかという法律があります。

しかし、消費者金融など債務は、日常家事債務とはいえない場合が多いですし、表見代理の成立についても否定されることが多いです。


家族が借金を返せないと自身に影響が及ぶことも

家族が借金を返せないと自身に影響が及ぶことも

先述したとおり、家族が借金を返済できなくても自身に支払い義務は及びません。

しかし、全く影響がないわけではありません。


もっとも大きい影響は、財産や給与の差押えです。


借金滞納が続くと多くの場合債権者が裁判を起こしてきます。それに対して対応しないでいると、財産や給与が差し押さえられてしまいます。

もちろん差し押さえられるのは債務者本人の財産や給与のみですが、もし家族みんなで住んでいる住宅がその債務者名義であれば、差し押さえられた場合全員で退去しなければなりません。


他にも、債務者本人の名義である車を家族で利用している場合や、家族全員の生活を主に債務者本人の給与だけで支えている場合などは、財産・給与差押えによる他の家族への影響が非常に大きいです。

借金をしている家族が、返済に困っていたり、滞納しているという場合は、他人事と思わずに解決方法を一緒に模索する必要があります。


借金問題を解決したいなら債務整理を検討しよう

借金の返済に困っているなら債務整理を検討しよう

取り立てが実際に行われているということは、すでに計画通りの返済ができていない状況のはずです。

このような場合に検討したいのが、債務整理です。


債務整理をすることによって、借金の額を減らせたり、利息をカットすることができます。

それによって、返済が可能になり毎月きちんと返済していくことによって、借金の取り立てを根本的に解決することができます。


債務整理には下記の4つの方法があります。

  1. 任意整理
  2. 特定調停
  3. 個人再生
  4. 自己破産


それぞれわかりやすく解説していきます。


1.任意整理とは

任意整理とは、弁護士等の法律の専門家に依頼して、銀行や消費者金融業者等の債権者と交渉することによって行う債務整理の手段です。

交渉によって、借金の元金を減らしたり利息のカットを目指します。


借金に苦しんでいる人が自分の債権者と交渉してみても、債権者がなかなか交渉に応じてくれなかったり、交渉に応じてくれたとしても提示してくる条件が非常に悪かったりするのが一般的です。

そこで、法律の専門家である弁護士や司法書士(ただし、司法書士の場合は、借入額140万円を超えると、法律上、法律事務の取り扱いができません)に金融業者と交渉してもらって、有利な条件で和解をまとめてもらうものです。




2.特定調停とは

特定調停とは、借金を従来の約束どおり支払い続けることができなくなった債務者(特定債務者)が、裁判所の仲介によって債権者と話し合い、返済計画を立て直すことによって、経済的な再生を図る手続です。


簡易裁判所で行われ、「調停委員」という借金問題の仲裁の専門家と、裁判官で構成される「調停委員会」が、債務者と債権者(消費者金融など)の間で橋渡しをしてくれることになります。


返済計画がどのようなものになるかは状況によってさまざまですが、申立日における元本・利息・遅延損害金の合計額について、3年から5年程度、支払い続けるようになることが通常です。



3.個人再生とは

個人再生とは、裁判所を通じて行う手続きで、支払いきれなくなった借金を一定の基準に基づいて減額し、原則として3年間(最長5年間)の分割払いにする方法です。


任意整理とは異なり、裁判所により強制的に借金が減額されるので、「任意整理で利息をカットしたり、月々の返済額を減らしたりしても、返済を続けていくことがむずかしい」という人にとって魅力的な制度です。



4.自己破産とは

自己破産とは、自分が持っている財産や収入が不足し、借金返済の見込みがないことを裁判所に認めてもらい、原則として、法律上、借金の支払い義務が免除される手続です。

自己破産をすると原則として借金を支払う義務がなくなりますので、借金に追われる生活から解放され、新たな人生のスタートを切ることができます。


自己破産は個人的な手続きであるため、通常は家族や親族に影響が及ぶことはありませんし、知り合いに自己破産したことを知られる可能性は極めて少ないです。

ただし、保証人になっている場合は本人に代わって請求されますので、事前に相談するべきでしょう。







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