自己破産を考えたとき、自力で手続きを進めていくか弁護士等に依頼するか悩むところです。
弁護士等に依頼するデメリットとしては、もちろん費用が発生することですが、それ以上のメリットはあるのでしょうか。
この記事を読めば、自己破産を弁護士等に依頼するメリット・デメリットを知ることができます。
90%以上の人が弁護士等に依頼している
自己破産にはある程度の財産がある場合や借金の原因がギャンブルや浪費など、免責不許可事由がある場合の「管財事件」と財産もなく、免責不許可事由がない場合に選択される「同時廃止」の2つがあります。
どちらの方法によるべきかがわかれば、自己破産の申立ての準備に入ります。
では、申立ては弁護士や司法書士といった専門家に依頼したほうがよいのでしょうか。
実際のところ、自己破産手続をとる方の90%以上が、弁護士などの専門家に手続きを依頼しているといわれています。
専門家に依頼すべきかどうかは、それぞれの方の知識の程度、債務額、どういった債権者がいるのか等の具体的状況によって変わります。
「必ず専門家に依頼すべき」と言い切ることはできませんが、仕事をかかえながら金融業者の対応をしたり、申立書類を作成したりするのは、実際にはなかなか難しいことです。
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弁護士等に依頼するメリット
自己破産を弁護士等に依頼するメリットは下記の5つです。
- 債権者からの取立てを止めることができる
- すべての作業を任せることができる
- 免責許可決定を得られる可能性が高まる
- 手続が早く終了する可能性がある
- 少額管財事件を利用できる
それぞれわかりやすく解説していきます。
1.債権者からの取立てを止めることができる
弁護士などの専門家に手続きを依頼した場合の一番のメリットは、依頼した時点で金融業者等の債権者からの取立てを止めることができるという点です。
弁護士などに依頼した場合、専門家は「受任通知」という文章を債権者に送ります。
受任通知は、「専門家が債務者の代理人として債務整理を行うので、今後の連絡は代理人である専門家にお願いします」という内容の文章です。
受任通知が送られると、債権者は債務者に直接取立てを行うことはできなくなるのです。
債務者の取立ては自身だけでなく、家族や勤務先等にも迷惑をかける場合もあります。
取立てが止まることは、周囲の方にも安心感を与えることができるのです。
2.すべての作業を任せることができる
自己破産の申し立てにあたっては、大量の書類を用意しなければなりません。
そのうえでこれらを裁判所へ出向いて提出するなど、自己破産の申立てには大変な時間と労力が必要になります。
さらに、書類は収集だけで済むばかりではなく、財産調査等の作業をしたうえで自ら作成する必要があるものも多いですし、各書類には裁判所によって書式が定められており、これらの書式を裁判所に受け取りにいかなければならないという手間もかかります。
しかし、弁護士などの専門家に依頼すれば、これらの作業をすべて任せることができますから、面倒な事務作業に煩わされることはありません。
3.免責許可決定を得られる可能性が高まる
弁護士などは法律の専門家ですから、破産手続きに精通しています。
したがって、法律知識やこれまでの経験を活かし、必要書類の作成にあたって工夫したり、債務者と裁判官の面接の機会である審尋の前には、「裁判官の質問にどのように答えればいいのか」などのアドバイスをしてもらえます。
こうしたことにより、自身で自己破産手続きをする場合よりも「免責許可決定」(自己破産を認める決定)を得られる可能性が高まるといえます。
4.手続が早く終了する可能性がある
裁判所から破産手続き開始決定が下りるのは、通常であれば申立てを行ってから1~2ヶ月程度かかります。
しかし、手続を弁護士に依頼した場合、東京地方裁判所など一部の裁判所では「即日面接」という制度があり、申立てを行った当日に弁護士が裁判官と面接を行い、破産申立書をもとに申立てに至った経緯等を説明することができます。
そして、その場で裁判官に「申立人が支払い不能にある」と判断してもらえた場合は、早ければ当日にも破産手続き開始決定を出してもらえるのです。
このように、弁護士に手続きを依頼することで、自己破産の手続きにかかる時間を大幅に短縮できる可能性があるのです。
手続に要する時間は少しでも短縮したい方がほとんどでしょうから、これも大きなメリットといえます。
ちなみに、このメリットは弁護士に依頼した場合のみ効果を発揮するもので、司法書士等では無理です。
5.少額管財事件を利用できる
破産手続き開始決定後、換価するほどの財産がある場合には「管財事件」となり、破産管財人が選任されます。
破産管財人が破産者の財産である「破産財団」に属する財産を処分・換価し、その後、それが各債権者に配当されます。
しかし、この場合でも弁護士が代理人となっていると、東京地方裁判所など一部の裁判所では、「少額管財事件」を利用できるケースがあります。
少額管財事件とは、管財事件において債務者が負担する費用である「予納金」が少なくて済む手続きです。
通常の管財事件の予納金は「最低50万円」とされていますが、少額管財事件の予納金は「最低20万円」と大きな差があります。
このメリットは弁護士に依頼した場合のみ効果を発揮するもので、司法書士等では無理です。
弁護士等に依頼するデメリット
デメリットは、強いていえば、専門家に支払う費用がかかるという点だけです。
たしかに、自己破産を検討するような状況ですから、弁護士などの専門家への費用の支払は大きな負担です。
しかし、専門家への支払がむずかしい場合には、国が弁護士費用を立て替えてくれる「民事法律扶助」という仕組みの利用も考えられます。
民事法律扶助業務とは、経済的に余裕がないほうが法的トラブルにあった時に、無料で法律相談を行い、弁護士・司法書士の費用の立替えを行う業務です。
扶助業務の対象は、国民および我が国に住所を有し、適法に在留する外国人です。
法人・組合等の団体は対象にふくまれません(総合法律支援法第30条第1項2号)。
まとめ
自己破産を弁護士等に依頼するメリットは下記の5つです。
- 債権者からの取立てを止めることができる
- すべての作業を任せることができる
- 免責許可決定を得られる可能性が高まる
- 手続が早く終了する可能性がある
- 少額管財事件を利用できる
一方、自己破産を弁護士等に依頼するデメリットは、専門家に支払う費用がかかるという点だけです。
以上、弁護士などの専門家に依頼する場合のメリットとデメリットを説明してきました。
一般的には専門家に依頼するほうがよいケースが多いと考えられますが、これらを検討したうえで、最終的に自身で進めるか専門家に依頼するかを決めましょう