自社製品の送付などの株主優待制度を廃止する企業が相次いでいます。
オリックスや日本たばこ産業(JT)などが廃止を決め、実施企業は3年で約50社減りました。
株主優待は機関投資家や外国人投資家にとって活用が難しく不平等との批判があり、配当や自社株買いで株主に還元します。
個人株主も優待目的から成長戦略などを重視する投資方針に変わりつつあります。
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株主優待は「株主平等の原則」に反するとの批判がある
野村インベスター・リレーションズ(IR)によると、株主優待の採用企業数(REIT、ETFを含む)は7月末時点で1483社と、全上場銘柄の34.5%が実施しています。
2019年(1532社)をピークに3年連続で減少しました。
株主優待は上場維持や指定替えに必要な株主数を確保するため、自社の株式を安定保有する個人投資家の獲得を狙う側面がある。
一方で機関投資家にとって優待の製品は不要な場合が多く、海外に住む外国人投資家には製品を受け取ることが難しいとの理由から、株主優待は「株主平等の原則」に反するとの批判があります。
4月に実施した東京証券取引所の再編の目的の一つが海外マネーを呼び込むことであり、企業には優待に変わる還元策が問われています。
株主優待を廃止する企業は増加している
野村IRによると、22年4~7月に株主への利益配分を公平にするために優待を廃止した企業は17社にのぼります。
カタログギフトや自社製品の送付などの優待で人気のあったオリックスやJT、マルハニチロも廃止を決めました。
オリックスは「株主へのより公平な利益還元のあり方という観点から慎重に検討を重ねた」と話しています。
JT、マルハニチロを含め、今後は配当などによる利益還元に集約すると説明します。
株主優待を廃止しても企業の株価は暴落しない
優待廃止を発表した企業の多くは一時的な株価下落にとどまっています。
優待廃止と同時に増配を発表したマルハニチロの1日時点の株価は、優待廃止発表前の5月9日終値に比べて6%高いです。
エービーシー・マートは自店舗で使える優待券の廃止とともに自社株買いを発表しました。
丸井グループも8月5日に優待廃止と同時に増配を発表し、株価は廃止前からほぼ横ばいでした。
その背景に個人投資家の認識の変化があります。
かつては優待廃止は株主還元の縮小とみなされて売られるケースが目立っています。
個人投資家のみきまるさんは保有していたフジ・コーポレーションが3月に優待の廃止を発表しましたが、自社株買いを同時に発表したことを評価し買い増しました。
「優待を廃止しても、業績や将来性がしっかりしていれば売ることはない」と話しています。
優待に詳しい個人投資家のkenmoさんは「優待商品の製造コストなども上昇しており、優待が会社側にとってコストだということは認識している」と話しています。
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まとめ
自社製品の送付などの株主優待制度を廃止する企業が相次いでいます。
野村インベスター・リレーションズ(IR)によると、株主優待の採用企業数(REIT、ETFを含む)は7月末時点で1483社と、全上場銘柄の34.5%が実施しています。
2019年(1532社)をピークに3年連続で減少しました。
株主優待は「株主平等の原則」に反するとの批判があります。
一方で4~7月に優待を新設した企業も10社ありました。
持ち帰りすし大手の小僧寿しは自社グループの店舗で使える割引カードの発行を発表。
同社は優待の新設理由の一つに株主数を増やすためと言っています。
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