民間住宅ローンを利用する際には、「10年固定」と「変動金利型」のどちらを利用するか迷う人も多いでしょう。
この記事では、住宅ローンの返済総額(予想額)という観点から、この2つの損得を試算してみます。
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固定金利選択型(10年固定)VS変動金利型の試算例
下表の試算の前提条件ですが、今後5年間は金利上昇が起こらず、6年目に上昇する前提です。
比較を単純にするために、保証料は「枠外方式」で、その後の適用金利もずっと同じです。
また、「10年固定」を利用するプランも11年目以降は変動金利に移行します。
「10年固定」(当初優遇型)を利用した例(返済期間:25年)
当初10年間 | 11~25年 | |
借入金額 | 4,000万円 | (2,531万円) |
運用金利 | 1.10% | 2.75% |
年間返済額 | 183.1万円 | 206.1万円 |
各期間の返済合計 | 1830.8万円 | 3,091.1万円 |
25年間の返済総額 | 4,921.9万円 |
「変動金利型」を利用した例(返済期間:25年)
当初5年間 | 6~25年 | |
借入金額 | 4,000万円 | (3,249万円) |
適用金利 | 0.625% | 2.30% |
年間返済額 | 172.9万円 | 202.8万円 |
各期間の返済合計 | 864.3万円 | 4,056.6万円 |
25年間の返済総額 | 4,920.9万円 |
変動金利型の6年目以降の適用金利が、現在と比べて「1.675%」(2.30%−0.625%)以上あがらなければ、変動金利型のほうが有利。
当初優遇型の10年固定の注意点
上表で注目したいのは、最初から変動金利型だった場合と、10年固定から移行した場合とでは、同じ金融機関の変動金利型であるにもかかわらず、11年目以降の適用金利が違う点です。
今回の「10年固定(当初優遇型)」は、11年目以降の金利優遇が「1.4%」という設定です。
一方で、最初から変動金利型だった場合の金利優遇はずっと「1.85%(2.475%−0.625%)」。
そのため、「10年固定」から変動金利型に移行した場合、その後は同じ金利タイプであるにもかかわらず、11年目以降は「0.45%(1.85%−1.4%)も適用金利が高くなってしまいます。
それでは、試算結果を見てみましょう。
今回の前提条件では、6年目以降の変動金利型の適用金利が「2.30%」になった場合、返済額は同じとなります。
このケースの損得は、6年目以降に「1.675%(2.3%−0.625%)」の金利上昇が起こるか、にかかっているわけです。
これ以上の金利上昇となった場合は、結果的に「10年固定」が有利となり、ここまで金利が上がらなければ変動金利型が正解だったことになります。
後はこの数字を参考に判断しますが、今回のような前提条件(=「10年固定」の条件がさほど良くない)であれば、変動金利型が正解となります。
なお、興味深いことに、このケースでは返済期間が長いほうが変動金利型にとって有利な状況が出現します。
本例のような「10年固定」では、返済期間が長いほど、11年目以降の割高な変動金利の適用が長く続くためです。
一方で、「通期優遇型の10年固定」では、最初から変動金利型を利用しても、10年後に移行しても、同じ金利水準が適用されますので問題はありません。
また、「10年固定」を利用したほうが目先の金利上昇のリスクも低下します。
もっと早くから金利上昇が起きたり、6年目以降の上昇幅が大きい場合は変動金利型が不利になる可能性もありますが、そこまでの状況を想定するのであれば、長期の固定金利型ローンを利用すべきです。
あくまでも金利水準が低いという前提ですが、変動金利型を優先してよいのは、①当分は金利上昇が起きないと考える、②条件のよい他の金利タイプが利用できない、といった場合が中心となります。
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