この記事では、ファンダメンタル分析の一つ「労働分配率」について解説していきます。
労働分配率がわかれば、会社が人件費をどの程度捻出しているかがわかります。
労働分配率は、企業の「生産性」がわかる経営指標です。
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労働分配率とは
労働分配率とは、付加価値に占める人件費の割合のことです。
比率にして表すことによって、他社との比較が可能になり、優れた会社を簡単に発見することができます。
従業員の立場からみれば、給料は高い方がよいので労働分配率が高い方が望ましいでしょう。
しかし、高すぎる労働分配率は固定費を高くすることになり、経営を圧迫します。
会社としてはできるだけ少なくしたいとこでしょうが、離職率に影響をおよぼしますので適正水準を保つ必要があります。
人件費が高ければ労働分配率も高くなります。一般的に労働集約型の会社は高くなる傾向にあります。
労働集約型
労働集約型とは、人間の労働力に頼る割合が大きい産業のことをいいます。お金や機械よりも、人間の手による仕事量が多い産業。
たとえば、飲食業やサービス業、運送業などが労働集約型にあたります。
労働集約型は、創業からどの程度経っているかも判断基準になります。
創業から間もないころは利益が少ないため、労働分配率も高めになりがちです。
付加価値とは
計算式に必要な付加価値について解説していきます。
付加価値とは、読んで字のごとく、付け加えられた価値のことです。商品やサービスが本来持っている価値に、プラスして付け加えた価値が付加価値になります。
たとえば、独自のルートで商品を得たり、独自技術によって製品を開発したりするなど、他社とは違う方法によって生み出された価値のことです。
付加価値は、会社の従業員や機械などが、いかに効率よく利益を稼ぎ出したかを示す生産性を明らかにするためにも用いられます。
人件費とは
人件費とは、会社で働く「人」に関わる費用のことです。人件費には従業員に支払われる給与をはじめ、雇用によって発生する様々な費用が計上されます。
「損益計算書」の「販売費及び一般管理費」のなかには、「給料」など、いわゆる「人件費」に該当するものが含まれています。
人件費には、社員の給料や賞与、役員の報酬以外に、健康保険や雇用保険、労働保険などの社会保険が含まれます。
ほかにも、健康診断や慰労関連費、慶弔見舞金などの福利厚生費や退職金も含まれます。
さらに社員の交通費や住宅手当などの各種手当金なども該当します。
労働分配率を求める計算式
労働分配率の計算式は下記のとおりです。
$$労働分配率=人件費÷付加価値×100$$
労働分配率は、従業員立場から見れば高いほうが望ましいですが、会社としては低くしたい指標です。
付加価値額の求めかた
付加価値の計算方法には、「控除法(中小企業庁方式)」と「加算法(日銀方式)」があります。一般的には「控除法」が用いられることが多いです。
控除法(中小企業庁方式)とは
控除法とは、売上の総額から経費(原価)を差引いて計算する方法です。中小企業庁方式とも呼ばれています。
控除法の計算式は下記のとおりです。
$$付加価値=売上高−外部購入費$$
外部購入価値とは原材料費・消耗品費・外注加工費・外部用役費・仕入商品などです。
加算法(日銀方式)とは
積上法とは、生産の過程で生み出された価値を積み上げていくという考え方です。日銀方式とも呼ばれています。
$$付加価値=人件費+金融費用+減価償却費+賃借料+租税公課+経常利益$$
労働分配率の目安と業種別平均
業種によって労働分配率の平均値は異なるので、他の会社と比較するときは同業種で行う必要があります。
業種別の平均値を知ることで、企業に求められる労働分配率の目安がわかります。
主な業種の労働分配率は下記のとおりです。
業種 | 労働分配率(%) |
製造業 | 46.9 |
情報通信業 | 56.8 |
卸売業 | 52.5 |
小売業 | 48.7 |
サービス業 | 70.8 |
労働分配率の比較方法
労働分配率を他社と比較する方法を解説していきます。比較することで労働分配率の目安がわかります。
比較する会社には、ふさわしい会社を選ぶ必要があります。
比較会社は会社四季報で確認できる
目当ての会社を他社と比較するときに便利なのが、「会社四季報」です。
会社を比較するときに重要なのが、「同業種」であることと「会社規模」が近いことになります。
会社四季報には、上記の条件に当てはまるライバル企業を掲載しています。
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まとめ
労働分配率とは、会社が生み出した付加価値を人件費にどれだけ分配したのかを見る指標です。
労働分配率は、高ければ従業員は喜びますが、固定費が増えるなどの会社によっての悪影響もあります。
従業員としては、会社の経営が傾かない程度に上げてほしい…。
会社としては、従業員が辞めない程度に下げたい…。
労働分配率は、従業員と経営者のはざまで揺れる経営指標です。
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