この記事では、企業活動における「付加価値」について解説していきます。
付加価値を理解できれば、企業が利益を上げる構造がわかります。
付加価値とは
付加価値とは、読んで字のごとく、付け加えられた価値のことです。商品やサービスが本来持っている価値に、プラスして付け加えた価値が付加価値になります。
たとえば、独自のルートで商品を得たり、独自技術によって製品を開発したりするなど、他社とは違う方法によって生み出された価値のことです。
付加価値は、会社の従業員や機械などが、いかに効率よく利益を稼ぎ出したかを示す生産性を明らかにするためにも用いられます。
企業の業績は決算書に記載されていますが、決算書に「付加価値」という項目はありません。
付加価値の金額を求めたい場合、決算書(損益計算書)に記載されている、人件費 、金融費用 、 減価償却費、賃借料 、租税公課、経常利益の合計ということになります。
付加価値のざっくりとしたイメージ
付加価値をざっくり説明すると、売上から原価を差し引いた額で、利益とほぼ同義語として扱われます。
例えば、原価1,500円の製品を加工して2,000円で販売した場合、生産された付加価値は500円ということになります。
付加価値を求める計算式は下記のようになります。
$$2,000円(売価)- 1,500円(原価)= 500円(付加価値)$$
付加価値と売上総利益の違い
業種によって「付加価値=売上総利益」の場合がありますが、ほとんどの場合で「付加価値と売上総利益は違います」。
小売業や卸売業のような「仕入れて売るだけの場合」ならば、売上高から売上原価を差し引いた金額の「売上総利益」=「付加価値」と考えて大丈夫です。
付加価値額を求める計算方式
付加価値の計算方法には、「控除法(中小企業庁方式)」と「加算法(日銀方式)」があります。一般的には「控除法」が用いられることが多いです。
控除法(中小企業庁方式)とは
控除法とは、売上の総額から経費(原価)を差引いて計算する方法です。中小企業庁方式とも呼ばれています。
控除法の計算式は下記のとおりです。
$$付加価値 = 売上高 - 外部購入価値$$
外部購入価値とは原材料費・消耗品費・外注加工費・外部用役費・仕入商品などです。
加算法(日銀方式)とは
積上法とは、生産の過程で生み出された価値を積み上げていくという考え方です。日銀方式とも呼ばれています。
加算法の計算式は下記のとおりです。
$$付加価値=人件費+金融費用+減価償却費+賃借料+租税公課+経常利益$$
加算法は、減価償却費を含める場合と含めない場合があります。
- 減価償却費を含んだ場合「粗付加価値」
- 減価償却費を含まない場合「純付加価値」
人件費とは
人件費には給料や賞与だけでなく、さまざまなものが含まれます。
人件費に含まれる主な項目は、「給料」「賞与」「役員報酬」「福利厚生」「退職金」です。
金融費用とは
金融費用とは、企業が事業を営むために必要となる資金の調達にかかった費用のことです。
金融費用に含まれる項目は、「支払利息」「社債利息」「割引料」「社債発行費償却」などです。
減価償却費とは
減価償却とは、長期間にわたって使用し経年劣化が生じる資産を取得した際に、取得にかかった費用をその資産の耐用年数の間に分散して費用を計上することです。
しかし、付加価値計算における減価償却費には、製造原価や販売費、一般管理費が該当しますが、特別勘定に計上されたものは該当しません。
賃借料とは
賃借料とは、企業が事業を持続するにあたって必要となる土地や建物などの不動産費用、さらに機材や社用車にかかる費用も含みます。
租税公課とは
租税公課とは、企業が事業を経営するに必要な税金や出費を指します。具体的には、「国税」や「地方税」などが該当します。
経常利益とは
経常利益とは、売上の総額から経費を差引いた「営業利益」に、その他で生み出された企業利益を加算した数値のことです。
付加価値を高める3要素
会社経営の3要素といわれる「人」「物」「金」に関わる部分を改善することで、会社の付加価値(生産性)を高めることができます。
人の改善で付加価値を高める
- 効率のいい仕事をする人
- 高度な仕事をする人
- 結果を出す人
- 国際的な活躍ができる人
物の改善で付加価値を高める
- 高品質の製品を製造する機械の設置
- 顧客を集める施設の建設
- 原材料となる資産の確保
金の改善で付加価値を高める
- 新たな事業に必要な資金の調達
- 経営を維持していくための資金繰り
- 金融市場の動向への対応
- チャンスを逃さない潤沢な資金力
まとめ
付加価値とは、読んで字のごとく、付け加えられた価値のことです。商品やサービスが本来持っている価値に、プラスして付け加えた価値が付加価値になります。
付加価値は、会社の従業員や機械などが、いかに効率よく利益を稼ぎ出したかを示す生産性を明らかにするためにも用いられます。
現在は物があふれている時代ともいわれています。インターネット環境の発達により、多くの業種・業態の既存ビジネスが提供してきた付加価値は、大きく損なわれつつあります。
新たな付加価値の創造は、これからの会社経営で避けられない重大な課題ともいえます。