この記事では、ファンダメンタル分析の一つ「棚卸資産回転率」について解説していきます。
棚卸資産回転率を理解すれば、企業の「収益性」を知ることができます。
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棚卸資産回転率とは
棚卸資産回転率とは、棚卸資産がどのくらいの頻度で売れているかがわかる指標です。
棚卸資産回転率は、「売上高」と 「棚卸資産」の比率を表したものです。
金額ではなく、比率としてあらわすことによって、他社と比較することが可能になます。
棚卸資産回転率を見れば、ライバル企業と比べて「優れているのか」「劣っているのか」が、ひと目でわかります。
「棚卸資産」とは、在庫のことを意味しています。在庫とは「完成している商品」「未完成の商品」「製品の材料や部品」「建築資材」などのことを指します。
在庫が多すぎて販売するまでに時間がかかると、劣化したり賞味期限を過ぎたりすることもあります。そうなってしまうと、その在庫を販売して売上を獲得することはできなくなります。
ほかにも、保管のコストもかさみますし、廃棄するためにコストがかかる場合もあります。
一方、保管している在庫が少ないと品切れの可能性が出てきます。本来なら販売して利益を上げることができるのに、在庫が無くて販売できない事態に陥ることもあります。
つまり、会社にとって適正な在庫量を管理し在庫の回転率を高めるということは、会社経営をするうえでは非常に大切なことです。
売上高とは
棚卸資産回転率を求める計算式に必要な、「売上高」を説明していきます。
売上高とは、企業の主たる商品やサービスを提供することによって得られた売上の合計額です。売上と呼ばれることもあります。
例えば、単価が100円で販売している商品が1つ売れると、売上高は100円となります。また、決算期間(ある1年間)に商品が10個売れると、1,000円の売上高が計上されます。
棚卸資産とは
棚卸資産回転率を求める計算式に必要な、「棚卸資産」を説明していきます。
棚卸資産とは、会社が販売する目的で一時的に保有している商品・製品・原材料・仕掛品の総称のことで、いわゆる「在庫」のことを指します。
そのため、小売業であれば「商品」などになりますし、製造業であれば「原材料」や「仕掛品、半製品、製品」などになります。
不動産業であれば事業で取り扱うものが土地や建物などになり、販売前で保有する土地や建物も「在庫」となるため、住宅販売会社が保有する自社土地などが棚卸資産となります。
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棚卸資産回転率が高い意味とは
棚卸資産回転率は、棚卸資産が1年間で何回転しているかを示しています。
棚卸資産回転率が高いということは、それだけ在庫を仕入れてから販売に至るまでの時間が短いことを意味し、会社経営にとって良いことです。
棚卸資産回転率は、販売が好調で商品がよく売れている時に高くなる傾向があります。
在庫を仕入れてから販売までの時間が短ければ、在庫の劣化を防げますし、賞味期限が過ぎるのを避けることもできます。
また、保管のためのコストも少なくてすみますし、在庫を破棄することも減ります。
しかし、棚卸資産回転率が高いということは、それだけ在庫の数が少ないことを意味しています。在庫が少なすぎると品切れのリスクがあるので注意が必要です。
棚卸資産回転率が低い意味とは
棚卸資産回転率は、棚卸資産が1年間で何回転しているかを示しています。
棚卸資産回転率が低いということは、それだけ在庫を仕入れてから販売に至るまでの時間が長いことを意味し、会社にとって悪いことです。
棚卸資産回転率は、販売不振で商品が売れ残っているときに低くなる傾向があります。
在庫を仕入れてから販売までの時間が長ければ、在庫が劣化することもありますし、賞味期限が過ぎることもあります。
また、保管のためのコストもかかりますし、在庫を破棄することも増えます。
しかし、棚卸資産回転率が低いということは、それだけ在庫の数が多いことを意味していますので、品切れのリスクは回避できます。
棚卸資産回転率を高くするリスク
効率よく稼ぐためには在庫を減らし、棚卸資産回転率を高くすることは経営戦略にとって重要なことです。
しかし、極端に在庫を減らしてしまうことのリスクもあります。
それが、自然災害や突然の事故で物流が止まってしまった事態です。
在庫が無ければ生産や販売ができなくなってしまいます。東日本大震災のときには高速道路などが使えなくなり、企業は生産のための在庫を確保することができなくなりました。また、コンビニなどでは販売する商品を仕入れることができなくなりました。
在庫を減らすメリットもありますが、デメリットもあるので、棚卸資産回転率の適切なコントロールを企業には求められます。
棚卸資産回転率を求める計算式
棚卸資産回転率は、売上高を棚卸資産で割ることによって、数値を求めることができます。計算式は下記のとおりです。
$$棚卸資産回転率(回)=売上高÷棚卸資産$$
例えば、売上高が1,200万円で棚卸資産が100万円だった場合、棚卸資産回転率は12回ということになります。
棚卸資産回転率を実際に計算してみる
棚卸資産回転率を求める計算を実際にしてみましょう。
計算式に必要な「売上高」は『損益計算書』に記載されています。「棚卸資産」は『貸借対照表』に記載されています。
損益計算書と貸借対照表は、会社のホームページへ行き、IR情報から確認できます。
今回は、トヨタ自動車の決算書を使って棚卸資産回転率を計算していきます。
2019年3月期〔決算要旨〕2018年4月1日から2019年3月31日まで
$$30,225,681÷2,656,396=11.38$$
トヨタ自動車の棚卸資産回転率は11.38回転でした。
棚卸資産回転率の目安と業界平均
業種によって棚卸資産回転率の平均は異なるので、他の会社と比較するときは同業種で行う必要があります。
業種別の平均値を知ることで、企業に求められる棚卸資産回転率の目安がわかります。
主な業種の棚卸資産回転率は下記のとおりです。
主な業種の棚卸資産回転率 | |
運輸業 | 164.26回転 |
宿泊業 | 27.03回転 |
情報通信 | 25.81回転 |
サービス事業 | 20.25回転 |
卸売業 | 14.88回転 |
建設業 | 9.48回転 |
製造業 | 6.93回転 |
小売業 | 6.69回転 |
不動産 | 2.96回転 |
棚卸資産回転率を他社と比較する
棚卸資産回転率を他社と比較する方法を解説していきます。比較する会社には、ふさわしい会社を選ぶ必要があります。
比較会社は会社四季報で確認できる
目当ての会社を他社と比較するときに便利なのが、「会社四季報」です。
会社を比較するときに重要なのが、「同業種」であることと「会社規模」が近いことになります。
会社四季報には、上記の条件に当てはまるライバル企業を掲載しています。
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棚卸資産回転率を実際に比較してみる
棚卸資産回転率を使って実際に比較してみましょう。
トヨタ自動車の場合、比較会社は「日産自動車」「ホンダ」「スズキ」になります。
比較データは、2019年3月期の決算要旨です。
棚卸資産回転率の比較 | |
トヨタ自動車 | 11.38回転 |
日産自動車 | 9.20回転 |
ホンダ | 10.01回転 |
スズキ | 11.00回転 |
トヨタ自動車の棚卸資産回転率をライバル企業と比較すると、高い棚卸資産回転率を示して優秀な会社だということがわかりました。
棚卸資産回転期間の求め方
棚卸資産回転期間は、求めたい期間を棚卸資産回転率で割ることで数値を出すことができます。
一般的に使われる求めたい期間とは、「月」や「日」です。
つまり、12を棚卸資産回転率で割れば、月の棚卸資産回転期間を求めることができます。
また、365を棚卸資産回転率で割れば、日の棚卸資産回転期間を求めることができます。
月の棚卸資産回転期間を求める計算式
月の棚卸資産回転期間を求める計算式は下記のとおりです。
$$棚卸資産回転期間(月)=12ヵ月÷(売上高÷棚卸資産)$$
例えば、売上高が1,200万円で棚卸資産が100万円の場合の棚卸資産回転期間(月)の計算式は下記のとおりです。
$$12÷(1,200÷100)=1$$
売上高が1,200万円で棚卸資産が100万円の場合の棚卸資産回転期間(月)は、1ヵ月でした。
月の棚卸資産回転期間の計算によって、在庫が売れるまでに1ヵ月の期間を必要とすることがわかりました。
日の棚卸資産回転期間を求める計算式
日の棚卸資産回転期間を求める計算式は下記の通りです。
$$棚卸資産回転期間(日)=365日(売上高÷棚卸資産)$$
例えば、売上高が1,200万円で棚卸資産が100万円の場合の棚卸資産回転期間(日)の計算式は下記のとおりです。
$$365÷(1,200÷100)=30.41$$
売上高が1,200万円で棚卸資産が100万円の場合の棚卸資産回転期間(日)は、30.41日でした。
月の棚卸資産回転期間の計算によって、在庫が売れるまでに30.41日の期間を必要とすることがわかりました。
まとめ
棚卸資産回転率とは、棚卸資産がどのくらいの頻度で売れているかがわかる指標です。
棚卸資産回転率の推移を見れば、企業の在庫管理の状況がわかります。会社にとって適正な在庫量を管理し在庫の回転率を高めるということは、会社経営をするうえでは非常に大切なことです。
業種によって棚卸回転率は異なるので、他の会社と比較するときは同業種で行う必要があります。
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