住宅ローンを利用できる条件として、第一に「収入の安定」が挙げられますから、当然、雇用形態(正社員・非正規社員・自営業者)にも左右されます。
しかし、近年は働き方が多様化していることもあり、パートやアルバイトの方でも住宅ローンを借りられるケースが増えてきています。
この記事では、「正社員」「非正規社員」「自営業者」ごとに、住宅ローンを借り入れるときに知っておくべき知識を解説していきます。
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正社員でも給与形態によって借入額に差がある
住宅ローンは、通常は正規社員であることが借入の条件になりますが、給与の支給形態によって差が出ることがあります。
たとえば、給与が歩合制の場合を考えてみましょう。
住宅ローンの審査をクリアするには、給与収入が安定していることが求められ、月給制がもっとも有利といえます。
歩合制の場合、固定給に加え業績に応じて歩合給が加算されますが、給与に占める歩合給の割合が多ければそれだけ月給額が変動すると評価されます。
ですから、安定的な収入が見込めることを証明するには、たとえば、過去3年間の給与明細書を用意するなどしてプラス評価につなげるとよいでしょう。
非正規社員は勤続年数と収入の安定が重要
次に非正規社員の借りやすさを考えてみましょう。
非正規社員といっても、「契約社員」「派遣社員」「パート・アルバイト」の大きく3つに分類されます。
以前はこうした雇用形態の人は審査対象になりませんでしたが、近年は働き方が多様化していることもあり、住宅ローンを借りられるケースが増えています。
契約社員の場合、一定の期間がくれば更新あるいは再契約をするのが一般的ですが、勤続年数が2~3年以上であれば、民間金融機関で住宅ローンを組むことが可能です。
ただし、審査では会社の都合で突然解雇されるような場合への備えから年収を80%程度に想定されることもあると考えておきましょう。
派遣社員は勤続年数1年以上などであれば、正規社員と同じように民間の住宅ローンが組めます。
ただし、会社で加入している社会保険が、国民健康保険よりも協会けんぽや健保組合、また派遣先は中小企業よりも大企業のほうが審査は通りやすいです。
このように契約社員より派遣社員のほうが借りやすい傾向にあるのは、勤務先が倒産した場合、契約社員は次の仕事先を見つけるのに時間がかかることが多いのに対し、派遣社員は別の派遣先で収入を得ることが可能だからです。
つまり正規と非正規にかかわらず収入額の多さよりも、勤務が継続できるか、さらに安定した収入があるかを重視されることになります。
なお、フラット35は、雇用形態を条件にしていないため、パートやアルバイトでも2年以上勤続実績があれば利用できます。
契約社員やパート・アルバイトが審査に通るための3つのポイント
契約社員は正規社員に比べて審査に不利になることは否めません。
とはいえ、以前より随分通りやすくなっていて、都市銀行や地方銀行でも通る可能性があります。
ネット銀行等では、勤続年数を特に問わないところもあります。
一般的に契約社員が審査に通りやすくするためのポイントとしては、下記の3つが挙げられます。
- 年収
- 頭金
- 返済負担率
それぞれわかりやすく解説していきます。
1.年収
契約社員でも安定的にキャリアを積んで、年収は高いほど審査は通りやすくなります。
金融機関で求められていなくても、源泉徴収票や納税証明書を提示するとプラスの評価とされることもあります。
2.頭金
金融機関側にとって、頭金を100万円しか準備できていないか、500万円準備できているかによって、申込者に対する安心度は異なります。
貯蓄額が多ければ、それだけ返済能力を高く評価されるとともに、毎月の返済額も少なくなるので、審査は通りやすくなります。
3.返済負担率
契約社員は正規社員よりも返済負担率を低く設定されやすいため、同じ年収でも借入可能額が少なくなりがちです。
その意味からも上記で説明した頭金を多くためておくことが大切になります。
このほかにも、申込者の配偶者などが安定した職業に就いていると、審査に有利に働きます。
フラット35は審査に通りやすい
契約社員向けに住宅ローンの門戸は開きつつあります。
なかでもフラット35は雇用形態や勤続年数による条件を設けていないので、パート・アルバイトでも年収さえしっかりあれば、対象となる返済負担率の範囲内で借り入れができます。
また、雇用形態の条件がないことから返済負担率の基準を満たさなければ、配偶者等との収入合算の利用も考えられます。
夫が契約社員で妻がパートでも借りられる可能性があります。
健康保険・年金への加入、所得税・住民税をきちんと納税しているかも確認しましょう。
納税証明書は過去2,3年分があり、未納分は納入することが大切になります。
自営業者が審査に通るには「3期連続黒字」が原則
自営業者の審査では、給与所得者が「収入」で判定されるのに対し、収入から経費を差し引いた「所得」で判断される点が大きな違いです。
ほかに事業開始から3年経過していることが前提で、直近3期分の確定申告書、納税証明書を提出します。
また、給与所得者は、住宅ローンの申し込み前年の年収で判断されますが、自営業者は過去3期分の所得をチェックされます。
仮に所得が400万円➝500万円➝600万円と、右肩上がりだったとしても、3期の平均額500万円で審査されることが多いです。
ただし、右肩下がりより印象がいいことは間違いありません。
注意したいのは、節税対策をして所得を少なめにして申告をしていると、審査では条件が不利になってしまうことです。
たとえば、事業収入が2000万円あったとしても、節税をして400万円の所得で申告していれば、年収400万円の場合の借入可能額となります。
ですから、自営業者が審査に通るには、3年計画で自家消費を適正に計上して売り上げを増やし、節税はほどほどにすることが大切です。
また、会社経営者の場合はリスクが高いと判断されがちです。
審査では、本人の収入を証明する過去3年分の源泉徴収票(あるいは確定申告書)と、経営する会社の直近3期分の決算書を提出します。
一番のポイントは、継続的に安定した経営ができるかどうか。
そのため、資産状況を調査されたり、用意する自己資金額に条件を付けられることもあります。
自営業者が審査を通るためのポイント
- 直近3期が連続して黒字であること
- 年収は過去3年間の所得の平均が基準になる
- 自家消費※が適正に申告して売り上げを伸ばしておく
- 借入可能額を少なく提示される可能性があるので、自己資金は多めに用意しておく
- 会社経営者は事業が好調であることも大切だが、安定性・継続性を第一に考える
- 審査基準がゆるいフラット35の利用を検討する
- 税金、健康保険料などの未払いは納めておく
※自家消費:「家事消費」ともいう。個人事業主が棚卸資産、またはそれ以外の資産で事業用に使用していたものを、家事のために消費あるいは使用すること。たとえば、飲食店が残った食材で家族に食事を提供するなど、プライベートで資産を消費することなどを指す。
自営業者にも使いやすいフラット35
上記の条件はおもに都市銀行、民間金融機関の住宅ローンで重視されるポイントなので、ビジネスが持続可能か、安定しているか厳しくチェックされます。
しかし、公的ローンのフラット35は申し込み前年の年収で審査されるほか、決算書の提出が不要になるなど、収入の安定しにくい個人事業主にとっては申し込みがしやすいです。
なお、納税証明書が必要となるのは給与所得者も同様です。
税金や健康保険料などの支払いをきちんとできていないとフラット35であっても審査は通りません。
未納分はまとめて納めてしまうことが大切です。
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