財形貯蓄を行っていて一定の要件を満たす人が利用できるのが、公的な住宅ローンである「財形貯蓄融資」です。
勤務先の状況等によって申込み窓口が4つに分かれていますが、融資限度額などの基本的な部分についてはほぼ同じ内容です。
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財形住宅融資の概要
財形貯蓄には下記の3種類があります。
①:一般財形
②:住宅財形
③:年金財形
②と③については元利合計等で合わせて 550万円までの利子に対する税金が非課税とされます。
住宅財形の場合はマイホームの取得等資金として払い出す際に非課税あつかいとなりますので、頭金づくりを目的に利用している人も多いです(ただし、取得する住宅の床面積が 50㎡以上で、中古住宅の場合は築 20年ないし 25年以内などの要件を満たす必要があります)。
財形住宅融資は、これらの財形貯蓄のいずれかを1年以上継続して行っていて、その貯蓄残高(3種類の財形貯蓄の合計額で判断)が 50万円以上ある人が借りられます。
この要件を満たさなかったり、財形貯蓄制度が導入されていない企業で働く人、そもそも財形貯蓄の対象外である自営業者や会社役員などは利用できませんので、他の住宅ローンを借りることになります。
一方、財形住宅融資の利用が可能な場合は、申込窓口が勤務先の制度などによって4つに別れているため、自身がどこを通して申し込むのかをまず確認しておく必要があります(後述)。
なお、住宅の取得資金に充てるために住宅財形(財形住宅貯蓄)を払い戻す際に、財形住宅融資の申し込みを行って承認を得る前に解約してしまうと、融資が受けられなくなるので注意が必要です。
融資額は「財形貯蓄残高×10倍」
同じ財形住宅融資であっても、利用にあたっての細かい条件等は窓口によって異なります。
とりあえず、統一的な基準を確認していきましょう。
まず、融資限度額は 4,000万円です。
ただし、実際の借入金額には財形貯蓄の残高に応じた制限があり、「財形貯蓄残高×10倍」までとされています。
そのため、財形貯蓄の残高が 100万円という人は、この 10倍の 1,000万円を最大で借りられる金額となります。
取得する物件がまだ決まっていない場合で、財形住宅融資から多く借りたいと考えるなら、勤務先の手続き上可能であれば、積立額を増額して財形貯蓄の残高を増やす、という方法も検討しましょう。
次に、物件価額に対する融資額の上限も設定されており、こちらは9割までとなっています。
ただし、フラット35と併用する場合は合計で 10割まで利用できます。
これらの要件をすべて満たしたうえで、窓口ごとに設定された収入基準をクリアした場合に、希望額がすべて借りられることになります。
「フラット35」とは異なり、購入や建築する物件に対して複数の人が融資を申し込むことも可能ですが、それぞれの人が前述した要件を満たす財形貯蓄を行っていることが条件です。
また、別々に申し込まずに「収入合算制度」を利用することもできます。
なお、借り換えで利用することはできませんし、取得する住宅の床面積には緩やかではありますが一定の制限もあります。
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財形住宅融資の4つの窓口
財形住宅融資の対象者 | 申込み窓口 | |
転貸融資 | 「事業主転貸融資」の制度を導入している企業で働く人 | 勤務先 |
財形住宅金融(株)(厚生労働大臣登録の福利厚生会社)に出資する企業の社員 | 財形住宅金融(株) | |
直接融資 | 公務員で共済組合等に窓口がある人 | 各共済組合等 |
上記のいずれにも当てはまらない人 | 住宅金融支援機構の取扱店である金融機関 |
財形転貸融資 | 勤務先や福利厚生会社が、独立行政法人・勤労者退職金共済機構から資金を借り入れ、従業員に転貸する制度 |
財形直接融資 | 住宅金融支援機構や共済組合を通じて、利用者が直接的に資金を借り入れる制度 |
財形住宅融資の利用条件
住宅金融支援機構を通して借りる財形住宅融資では、機構の定める技術基準を満たし、「適合証明書」の交付が受けられる住宅が融資対象となります。
基準を満たすかは、仲介業者や工務店に問合わせることで確認できますが、「フラット35」の技術基準と同じだと考えておけば問題ありません。
中古住宅の築年数に関する制限はありません。
住宅の床面積が下表の範囲内であることも要件の一つです。
新築住宅か、中古住宅(=リ・ユース住宅等)であるかを問わず、現在では戸建て住宅の敷地面先に関する制限もありません。
返済期間は、新築住宅やリ・ユースプラス住宅と認定された中古住宅では最長35年で、それ以外のリ・ユース住宅は最長25年(すべて80歳完済)です。
返済方法は元利均等返済と元金均等返済から選ぶことができ、毎月払いに加えてボーナス払い(借入金額の4割以内)を併用することも可能です。
対象物件の床面積と返済期間の上限
物件の種類 | 対象物件の床面積 | 返済期間 | ||
新築 | 戸建て | 70㎡以上280㎡以下 | 35年以内 | |
マンション | 40㎡以上280㎡以下 | |||
中古 | 戸建て | リ・ユースプラス住宅 | 40㎡以上280㎡以下 | 35年以内 |
リ・ユース住宅 | 25年以内 | |||
マンション | リ・ユースプラス住宅 | 35年以内 | ||
リ・ユース住宅 | 25年以内 |
〈マイホーム新築の主な要件〉
- 住宅金融支援機構の定める技術基準に適合する住宅
- 土地については、申込年度の 2年前の 4月 1日以降(たとえば 2020年度の場合は、2018年 4月 1日以降)に取得した土地であれば融資の対象となる。ただし、土地のみに対する融資は無効で、住宅の取得時に合わせて借りる必要がある
〈新築住宅購入の主な要件〉
- 申込日前2年以内に完成または工事中の住宅(未着工のものを含む)で、建築基準法に定める検査済証が交付される未入居住宅(木造住宅の場合は、一戸建てか連続建てで耐久性向上措置を施している住宅に限る)
〈リ・ユース住宅購入の主な要件〉
- 「フラット35」が利用できる物件、もしくは「リ・ユース住宅適合証明書」において「リ・ユース住宅」のタイプのいずれかに適合すると証明された物件
- 2以上の居住室(食事室を含む)、台所、トイレ、浴室がある住宅
勤務先からの「負担軽減措置」が必要
財形住宅融資の利用にあたっては、原則として勤務先から 5年以上にわたり融資額の1%にあたる額(その額が 3万円を超える場合は年間 3万円)以上の援助を住宅手当や利子補給といったかたちで受け取る、などの「負担軽減措置」が受けられることも要件となります。
そのため、住宅金融支援機構の財形住宅融資(財形直接融資)を申し込む際には、申込用紙一式に入ってる「負担軽減措置等の証明書」という書類に勤務先の印鑑をもらい、提出しなければなりません。
ちなみに、この負担軽減措置によって勤労者が受ける経済的利益に対しては非課税とされていましたが、2011年 1月 1日以降は課税扱いとなっています。
財形住宅融資の金利
財形住宅融資の最大の特徴は、金利と返済額が5年ごとに見直される「実質的な変動金利型ローン」だということです。
そのため、将来的な金利上昇リスクは残りますが、公的融資ですので、金利水準は低く設定されています。
財形住宅融資は5年ごとの変動金利型
財形住宅融資の金利は、「五年固定金利制」という名称がついています。
「固定」と表記されてはいますが、実際には5年ごとに金利が見直され、それに伴って返済額も変わる仕組みですので、民間住宅ローンでいうところの「変動金利 5年もの」といったほうが正しいかもしれません。
民間の変動金利型も返済額は5年単位で変わりますが、5年目以降 5年間の返済額はどんなに金利が上がっても、直前の返済額の1.25倍が上限となります。
一方、財形住宅融資は最大 1.5倍まで返済額が増える仕組みですので、直前に金利が急上昇した場合、返済額も急上昇します。
「フラット35」との併用も検討の価値あり
2010~2020年では、民間の「固定金利選択型ローン」の「5年固定」より、低めの金利水準で推移しています。
保証料が不要である点や、民間住宅ローンのような優遇金利ではなく、この水準自体が基準金利であることなどを勘案すると、非常に魅力的ですが、やはり将来的な金利上昇リスクには不安も残ります。
そこで検討したいのが、「フラット35」との併用です。「フラット35の固定金利」と「財形住宅融資の(実質)変動金利」の組み合わせによるメリットが期待できます。
なお、民間住宅ローンでは、原則として融資実行時の金利が適用されますが、財形住宅融資の当初の適用金利は申し込み時点の金利となります。
住宅金融支援機構を通して借りる「財形直接融資」では、団体信用生命保険への加入は任意です。
機構団信に加入する場合は「フラット35」と異なり、団信特約料は金利に含まれていません。
毎年の契約応答日に年払いで特約料を支払うため、実質金利は「適用金利+0.35%」程度となります。
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